世界各地における人権侵害の告発と人権保護を目的に活動する国際連合の組織。世界人権会議で採択された「ウィーン宣言及び行動計画」に基づき、1993年の第48回国連総会で創設が決まった。略称OHCHR。国連事務局の人権担当部門として、人権侵害の調査・告発や、人権に関する国際協力、啓蒙(けいもう)、国際的基準の普及などに取り組んでいる。また、国連人権理事会や条約によって設けられた専門家委員会その他の人権機関の事務局を務める。本部はスイスのジュネーブにあり、世界の人権状況を監視・調査するためニューヨークなど世界約60か所に地域事務所などをもつ。職員は2013年12月末時点で1085人。トップは人権高等弁務官で、国連事務次長職を兼務する。人権高等弁務官の任期は4年で、1回のみ再任可能。国連事務総長が指名し、国連総会での承認が必要である。
初代の人権高等弁務官はエクアドル外務大臣などを務めたホセ・アヤラ・ラッソJosé Ayala-Lasso(1932― )。活動経費は、国連通常予算のほか、主要国からの任意拠出金でまかなわれている。国連人権理事会などの要請で、アフリカ、アジア、東欧、南米などの紛争地帯に調査団を派遣し、人権侵害の状況、死亡者や負傷者数などを調査・報告している。そのため危険地帯への派遣が多く、第3代人権高等弁務官を務めたブラジル出身のセルジオ・デ・メロSérgio Vieira de Mello(1948―2003)がバクダッドの国連事務所爆破事件で死去したように、事務所スタッフが死傷することも少なくない。
国連人権高等弁務官事務所は2010年(平成22)、日本に対してもアイヌや外国人労働者などへの差別があるかどうかの実態を審査。北朝鮮の拉致(らち)問題、高校授業料の無償化対象に朝鮮学校を含めるかどうかの問題、特定秘密保護法、従軍慰安婦問題などについて関心や懸念を表明している。
[矢野 武 2015年2月17日]
国際連合の人権活動を調整し,監督することを任務とする国連機関。所在地はジュネーヴ。ウィーン世界人権会議の勧告にもとづき1993年12月,国連総会決議によって設置。冷戦後,人権分野における国連の取り組み強化のために設置された。特に人権センターを統轄する。人権高等弁務官は,事務次長級の地位にあり,事務総長が任命し,総会が承認。任期は4年。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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