日本大百科全書(ニッポニカ) 「国際観光ホテル」の意味・わかりやすい解説
国際観光ホテル
こくさいかんこうほてる
訪日外国人旅行者が安心して宿泊できるホテル・旅館として、設備や接遇において一定の水準が保証されている施設。国際観光ホテル整備法(昭和24年法律第279号)に基づき、観光庁長官が認可する。正式名称は国際観光ホテル整備法登録宿泊施設で、政府登録国際観光旅館ともよばれる。施設の入口や受付などに登録施設であることが明示される。認可を受けるためには、客室の広さや付帯するトイレ・バス(シャワー)、冷温水の出る洗面、施錠などの設備やロビーの構造、外国語や絵文字による館内表示などが規定に適合していなければならない。また、接遇面では外国語に堪能(たんのう)な外客接遇主任者が選任されており、外国人向けの従業員指導や研修の実施、苦情に対処できることなどが義務づけられている。登録された施設では施設基準の維持管理が求められる一方、税制面での優遇措置や観光庁のホームページに掲載されるという利点がある。しかし、登録施設は宿泊施設全体の5%程度で、制度利用はやや減る傾向にある。2022年(令和4)6月末時点の登録数は、ホテル942、旅館1385の合計2327施設である。
観光庁は2014年(平成26)6月に認定規定の一部を見直す改正省令を施行し、これにより洋食の朝食を提供することができるという条件が撤廃された。近年の外国人旅行者の7割以上がアジア圏から訪日していること、和食がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されたことが考慮された。
また、訪日外国人旅行者の増加を目ざす観光庁、経済産業省、厚生労働省は、観光競争力を強化する目的で、宿泊施設に宿泊する際のパスポート提示を指紋や手のひらなどの生体認証で代替するサービスの実証実験を2016年から開始した。訪日外国人が専用端末で事前に指紋とパスポートのICチップ情報を紐(ひも)づけて登録すると、日本の宿泊施設の受付で指や手のひらをかざすだけでチェックインができる。2017年度中に全国展開され、以降、クレジットカード情報をあわせて登録すれば、宿泊や物品購入の決済も生体認証でできるようになることを目ざしてきたが、2022年時点では、その展開・利用は限定的といわざるをえない。
[編集部 2022年10月20日]