地域的取極(読み)ちいきてきとりきめ(その他表記)regional arrangements

日本大百科全書(ニッポニカ) 「地域的取極」の意味・わかりやすい解説

地域的取極
ちいきてきとりきめ
regional arrangements

国際的な地方的紛争の平和的解決を目ざす取決めのこと。

 国際連合は、「国際の平和および安全の維持に関する事項で地域的行動に適当なものを処理するため」、その目的と原則に一致することを条件として、「地域的取極」また「地域的機関」の存在と行動を認めている(国連憲章第52条1項)。地域的取極(機関)に属する加盟国は、地方的紛争の平和的処理にあたり、安保理事会への付託に先だって、地域的取極(機関)による自主的な解決の努力をしなければならず(第52条2項・第33条)、理事会も、このような平和的解決のための自主的な努力を奨励する(第52条3項)。これに対し、地域的取極に基づく(地域的機関による)強制行動については、国連の対応が異なってくる。強制力の独占をたてまえとする国連集団保障体制の下では、強制行動は国連の権限と責任において、集中的、統一的に実施される。地域的取極(機関)による強制行動の実施には、理事会による積極的「利用」また少なくとも消極的「許可」に関する「事前の決定」が不可欠の手続きとされる(第53条1項但書)。

[森脇庸太]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地域的取極」の意味・わかりやすい解説

地域的取極
ちいきてきとりきめ
regional arrangement

地域的機関とも称される。一般的国際平和機構なかで考慮される地域的な取極,機関をいう。国際連盟規約第 21条も消極的にこれを認めていたが,国連憲章は第8章全体を割き,積極的にこれを認めた。すなわち国連の目的と原則に合致することを条件として地域的取極を認め,地方的紛争を安全保障理事会に付託する以前に平和的に解決することを奨励している。もっとも地域的取極による強制行動は,5大国の拒否権を含む安全保障理事会の「許可」が条件とされたので,国連憲章採択の際にアメリカおよびラテンアメリカ諸国の強い要請により集団的自衛権規定が別途設けられた。その結果,地域的取極は集団的自衛権に基づき安全保障理事会の「許可」を必要とすることなく防衛行動がとれるようになった。こうした地域的機関としては北大西洋条約機構 NATO,全米相互援助条約などがある。 (→地域的安全保障 )

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世界大百科事典(旧版)内の地域的取極の言及

【自衛権】より

…【高柳 先男】
[集団的自衛権]
 自国が直接攻撃を受けなくとも他国への攻撃を自国も攻撃を受けたものとみなして反撃することのできることを集団的自衛権という。これが新たに国連憲章51条に挿入された理由は,同じく国連憲章がその8章で認める地域的取極(とりきめ)の当事国間の相互援助義務の発動が安全保障理事会の許可を必要とするため,同理事会での大国の拒否権行使の結果その許可がえられない場合にも,集団的自衛権を援用して外部からの武力攻撃に対する相互援助を可能にするためであった。したがって集団的自衛権は他国防衛の権利という性格をもつとはいえ,攻撃を受けた国とのなんらかの関係をもっているという前提もなしに単なる他国援助のための軍事行動をこれで正当化することはできず,その発動のためには国家間に地域的紐帯のような一定の連帯関係がなければならない。…

※「地域的取極」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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