日本大百科全書(ニッポニカ) 「地域的安全保障」の意味・わかりやすい解説
地域的安全保障
ちいきてきあんぜんほしょう
regional and collective security
安全保障の分野で広範な権限と責任を有する地域的機関(取極(とりきめ))。集団保障は、地域的基盤においても成立し、地域的集団保障は、一般的集団保障(国際連合)の客観的統制の下において、その本来の機能を発揮することができる。
強制行動に関する限りにおいて、それは、国際連合(第一次的には安全保障理事会、第二次的には総会)の統制に服する。地域的機関による(地域的取極に基づく)強制行動の実施には、理事会の「決定」が前提とされているのであって、そこには、理事会の権限が「利用」の形式で、また、その責任が「許可」の形式で表示されている(国連憲章第53条)。地域的安全保障は、元来、域内の集団保障を目的に協同するものであって、域外の仮想敵国(または敵性集団)に対抗して同盟的に作動するのを本質的機能としない。しかし、このことは、地域集団が域外からの攻撃に反発して、個別保障的に反作用する可能性を否定しない。国家集団が多元的に並存するとき、相互の安全を統一的に保障する仕組みは存在しないからである。国連集団保障による客観的統制が不可欠とされるのは、このためである。
国連憲章上、地域的機関(取極)は、個別保障的に作用しうる自律化の可能性を認められている(第51条・第53条1項但書・第107条)。しかも、地域的取極のその後の展開過程は、集団的自衛権の組織化にみられるように、自律的機能の拡大・強化を基調とするようになった。
[森脇庸太]