地盤改良(読み)じばんかいりょう(その他表記)soil improvement

改訂新版 世界大百科事典 「地盤改良」の意味・わかりやすい解説

地盤改良 (じばんかいりょう)
soil improvement

構造物を建設する場合など,自然のままの地盤では目的を果たしがたいことがある。このような場合にその地盤をその目的に適した性質に改良することが行われる。これを地盤改良という。農業の生産性を高める目的で土壌の性質を改良する土壌改良とは区別されるのがふつうである。

 地盤改良の古くからの例として,古代からの道路の歴史にそれを見ることができる。車は前3000年ころにはすでに発明されていたといわれているが,車などを利用する交通路は,自然地盤のままでは軟弱なために不適当な場合があり,しばしば改良しなければならなかったであろう。古代ローマ時代の道路の作り方の一例として,道路の敷地内の軟弱土を除去し,良質な土で埋め戻し,よく締め固め,そこに大きい石を石灰で固めながら並べ,その上に小さい石と石灰を混ぜたものを敷き,さらにその上に砂れきと石灰を混ぜたものを敷き,最上層に石のブロックを並べて舗装を作っている。これは,交通に適するように地盤を積極的に改良して道路を作った舗装の歴史であると同時に,地盤改良の歴史であるともみることができる。

 古くから行われてきた地盤改良の方法を列挙してみると次のようになる。(1)緩い地盤をローラーやたこ(土を突き固める道具)などで締め固める締固め工法,(2)緩い砂地盤に水をかけて締め固める水締め工法,(3)軟弱な粘性土地盤に砂れきなどを入れて土質の改良を図る物理的土質改良工法,(4)水分が多くて軟弱な状態の地盤に対して,水はけをよくする排水工法,(5)良質の土に入れかえる置換え工法,(6)石灰などを加えて地盤を化学的に改良する化学的土質安定工法,(7)雑木などを格子状に結束して地表面に敷いた上に盛土などをする表面処理工法,(8)杭を打って緩い砂地盤を締め固めたり,粘性土軟弱地盤に杭打ちをして支持力のある骨組みを地盤中に作る杭打ち工法。

 近年,日本で新しい土地の利用を計画するときに,残されている土地は地盤を改良しないと目的を達しえないことが多い。例えば,かなり以前に作られた国鉄(現JR)の旧東海道本線は比較的よい地盤のところを選んで作られているが,1960年代に作られた東海道新幹線の場合は,東京~新大阪間のうちの約70kmがそのままでは建設に適さない軟弱地盤であったといわれている。そのような最近の状況に対応して,地盤改良については,きわめて多くの研究がなされ,今日では,新しい科学技術に基づき,かつ大規模施工が可能な多くの近代的地盤改良工法が開発されている。

今日の地盤改良工事の対象となっている典型的な地盤条件は,次の二つに大別することができる。すなわち,一つは水を多く含んだ軟弱粘土地盤の場合であり,もう一つは新潟地震のときに見られたように,地震時に,クイックサンド状態となる緩い砂地盤の場合である。

 軟弱粘土地盤の改良のために用いられる方法は,置換え工法や良質土や砂れきを押し込んで,良好な土と置き換える押出し工法,粘土層に砂の杭や各種の帯状排水材を鉛直に多数本打ち込み,盛土荷重を載せたり真空ポンプによる減圧を排水系統に加えることにより,粘土層を早期に圧密脱水させて地盤強度を高める工法(一般にバーチカルドレーン工法ともいい,用いる鉛直排水材により,サンドドレーン工法ペーパードレーン工法などとも呼ばれる),砂を柱状に多数本押し込んで支持力がより大きい複合地盤を作るサンドコンパクションパイル工法,粘土層の中に直流電流を流すと粘土層中の水分が陰極に集まるのを利用して脱水強化する電気浸透工法,多数のボーリング孔を利用して地盤中に燃焼熱を通して地盤を強化する焼結工法,生石灰を杭状に打ち込んで粘土中の水を吸収させ,粘土の脱水に役だたせるとともに柱状の石灰支持体を作る生石灰パイル工法,生石灰,または粉粒状態あるいはペースト状態のセメントを現地の粘土層中で混ぜて多数の強度の高い柱状体,または壁体を地盤中に作る深層混合処理工法などがある。また地表付近を補強する目的で用いられるものには,地表にある程度の厚さに砂を敷くサンドマット工法合成繊維のシートやポリエチレンのネットなどを地表に敷いて,その上に砂を敷き,盛土などをするシートネット工法表層土だけを石灰やセメントを混ぜて固化する表層固化工法などがある。なお,工事期間中だけ,短期的に安定した地盤状態とするためには凍結工法が用いられることもある。

 緩い砂地盤の改良に対しては,一般に振動または衝撃を加えて砂地盤を締め固めることによって安定した地盤に改善することと,薬液注入などを行って砂の安定性をよくするとともに遮水性をよくする薬液注入工法などが行われている。緩い砂地盤を地震時にも安定した支持力の大きい地盤とするために締め固める工法としていろいろの方法が考えられ,実用化されているが,おもなものとしては杭を打ち込んで砂地盤を締め固める締固め杭工法,振動力をもたせたローラーによる振動締固め工法,起振機を取り付けたプレートを地表に載せて締め固めるバイブロタンパー工法,棒状の振動体または串形(くしがた)の振動体を砂地盤に貫入させて締め固めるバイブロロッド工法および串形コンパクション工法,水を噴かせながら起振装置を内蔵した柱状体を砂地盤中に挿入した後,振動を加えながら柱状体を抜きつつ砂地盤を締め固めるバイブロフローテーション工法,クレーン車を利用して,大きなおもりを高いところから落下させて砂地盤を締め固める動圧密工法などが用いられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地盤改良」の意味・わかりやすい解説

地盤改良
じばんかいりょう

構造物を地盤上に構築する場合、あるいは地盤を掘削したり、土を建設材料として用いるような場合に、自然のままの地盤では安定性が不足することがしばしばある。このようなとき、人工的な手を加えて地盤または土の性質を改良することを地盤改良という。道路、滑走路の路床、路盤など比較的浅い基礎地盤を対象とした改良は土質安定処理との呼び名で区別されることもある。

 構造物および地盤の安定性を確保するうえで問題となるのは、地盤の破壊・沈下および水の浸透、排水にかかわる問題に集約され、土の性質のうち強度特性、圧縮特性および透水性の改良が地盤改良の主目的とされる。方法としては、(1)不良土を良質土に置き換える置換(ちかん)工法、(2)土を締め固めて人工的に密度を増加させる方法、(3)土粒子間の水分を除去し圧密を促進させることにより密度を増加させる方法、(4)固結材を攪拌(かくはん)混合したり土粒子間に注入して固結させる方法、およびこれらの併用工法がある。

 近年、構造物の大型化、大重量化の傾向が著しく、しかも建設用地の事情から埋立地や沖積低地などの軟弱な地盤に立地せざるをえないことが多くなり、さらに陸上だけでなく海域にまで施工領域が拡大され、海底地盤の改良が必要とされることも多くなってきた。また、急速施工が社会的に要請され、従来のように自然に地盤が落ち着くのにあわせて工事を進行させるような方法をとることが困難になってきた。このような背景のもとに軟弱地盤改良技術は急速に発展し、現在、多種多様な工法が実用に供され、工事の目的と条件に応じ適宜使い分けられている。

[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地盤改良」の意味・わかりやすい解説

地盤改良
じばんかいりょう
solidification of ground

建築物その他の地上建設物の設置,地下構造物または隧道建設,鉱山の坑道掘削などの目的に対し,地盤,地質条件が適切でない場合,その目的に適合するように地盤強度その他の地質条件を改良すること。永久的改良法と建設期間中の一時的改良法とがある。改良の対象となるのは軟弱な粘土質または砂質地盤,崩壊性岩盤,透水性岩盤などである。おもな地盤改良法には,化学的方法──水ガラスまたはプラスチックの注入による固化,電気化学的方法──電気的固化,脱水,ケイ化または鉄バクテリア法,熱的方法──電気溶融法,加熱空気法,燃料燃焼法,凍結法,物理化学的方法──セメント注入法,アスファルト注入法,機械的方法──基礎工法 (杭基礎,潜函) ,バイブロ・フローテーション法,などがある。地盤の状態と建設目的により最適な工法を選定する。

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百科事典マイペディア 「地盤改良」の意味・わかりやすい解説

地盤改良【じばんかいりょう】

地盤の支持力の増加,沈下・ふくれ上がりの防止等のため地盤を人工的に改善すること。悪質土を良質土に置き換える置換え工法,ウェルポイント工法等を含む締固め工法,サンドドレーン工法(水を吸い上げる砂柱をつくる)・プレローディング工法(あらかじめ地盤に載荷し圧密沈下後建造する)・電気浸透工法(地盤中に電極を埋め直流を流すと陰極に水が集まるのでこれを揚水する)などの脱水圧密工法,セメントや地盤注入剤を注入したり,多数の管を挿入し冷却水を送って凍結硬化させるなどの工法がある。

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