技術開発、生産、販売、サービス提供などの異なった業務を単一の企業(グループ)がすべて担うビジネスモデル。原料に近い分野の製造工程(川上工程)と最終製品に近い製造工程(川下工程)の統合や、同一業種の異なる部品やソフトをつくる企業の合併なども垂直統合にあたる。一般に製造部門はできるだけ製品を高く売ろうとし、販売部門は極力製品を安く仕入れようとするため、両者の間で牽制(けんせい)が起きる。ビジネスを垂直統合すると、こうした牽制関係が少なくなり、中間コストの圧縮、原料・製品調達や納期の安定化、顧客ニーズにあった製品の開発、品質向上などの利点がある。垂直統合によって企業は巨大化し、大きな市場占有率や利益を確保することができる。一方、設備投資が巨額となり、既存事業から撤退しにくくなるなど、経営リスクが大きくなる欠点もある。細かなニーズの把握やサービス提供が苦手となる面もある。垂直統合に対し、別々の企業が得意業務をそれぞれ担当するビジネスモデルを「水平分業」とよぶ。
高度成長期の自動車メーカーや電機メーカーによる部品会社や販売会社の合併・系列化が垂直統合の典型例である。アパレル業界で原材料調達から製造・販売までを一企業で実施する小売業SPA(speciality store retailer of private label apparel)が登場したことや、大手小売業によるプライベート・ブランド(PB)の開発・製造なども垂直統合に該当する。情報技術(IT)分野では、アメリカのIBM社が設計からハードウェア製造、基本ソフト(OS)開発、販売、アフターサービスまでを一手に担う垂直統合型ビジネスモデルで世界市場を握っていた。しかし1980年代後半からパーソナルコンピュータ(パソコン)が登場し、インテル社、マイクロソフト社など半導体素子や基本ソフトなどを得意とする企業群が生まれ、こうした企業による水平分業が全盛となった。2000年代に入ってデジタル家電が普及し、家電製品の価格下落が急速に進むと、投資リスクなどを分散するため、家電業界においても国際的な水平分業が一段と進んだ。
[編集部]
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