翻訳|brand
ブランドとは,特定の売手の製品およびサービスを識別するのに用いられる名称,記号,デザインなどを総称したものである。それらのうちで,言葉で表現できるものをブランド名といい,言葉で表現できない記号,デザイン,レタリングなどをブランド・マークという。また,ブランド名,ブランド・マークのうちで,その排他的使用が法的に保証されているものは,商標(トレード・マーク)と呼ばれている。ブランドは,それがメーカー(製造業者)に属するか,流通業者に属するかによって,メーカー・ブランドとプライベート・ブランドprivate brand(PBともいう)に分けられる。前者は,メーカーが自社の製品に対して使用するものであるのに対し,後者は,大型小売店,問屋などの流通業者がみずからが販売する製品に対して使用するものである。PB商品(プライベート・ブランドの商品)の多くは,それらの流通業者の企画のもとにメーカーに委託生産されるものであり,品質のわりに価格が安いのが特徴とされている。とくに大型小売店によるプライベート・ブランドは,ストア・ブランドとも呼ばれているが,その一つの変型として,近年注目されているものにノー・ブランド商品がある。これは,包装を極端に簡素化し,商品の基本的機能は維持しながら,さらに低い価格を設定したもので,ブランド・ネームをいっさい使用しないことから,そのように呼ばれている。ブランドはまた,その地域的広がりによって,全国を市場とするナショナル・ブランドと,一地域内でのみ売られるリージョナル・ブランドもしくはローカル・ブランドに分けられる。通常,主要なメーカー・ブランドはナショナル・ブランドであるので,メーカー・ブランドの代りにナショナル・ブランドという表現が用いられることがある。
企業が自社の製品にブランドを付与するのは,それを競争相手の製品から明確に区別するためであるが,それは,消費者のブランド・ロイヤルティbrand loyaltyの存在と無関係ではない。ブランド・ロイヤルティは,ブランド選択において,消費者がある特定のブランドに対してもつ好意的な態度,および,それに基づくそのブランドの反復的購買を指し,購買頻度が高く,その品質が事前に確認できないような製品ほど,それが生ずる傾向が高いとされている。その要因としては,ブランド・イメージと消費者の好みの一致,消費者の危険回避的態度および習慣形成的性向などをあげることができる。一般に,みずからのブランドに対するロイヤルティが高い市場では,そのブランドと関連ある新製品を導入するさいに,同一のブランドを用いるのが合理的である。そうすることにより,すでに確立されているそのブランドの知名度を,新製品についても利用することができるだけでなく,各製品の販売促進活動が,一つのブランドのもとで相乗効果を上げることが期待できるからである。このように,複数の製品に対し同一のブランドを使用しようという方策は,ファミリー・ブランド政策として知られている。これに対して,個々の製品に異なるブランドを使用するものをマルチ・ブランド政策という。これは,消費者のブランド間遷移の激しい市場でとくに有効である。そこでは,類似した製品をいくつかの異なるブランドのもとで販売することにより,しばしば全体として大きなマーケット・シェアを獲得することができる。また,マルチ・ブランド政策は,同一の製品で相異なる消費者層をターゲットとする場合,および,高級イメージをもつ製品ラインとより安い製品ラインを,同時に市場に提供しようとする場合などにも,しばしば適用されている。乗用車における双子車,三つ子車は前者の場合の代表例であり,後者の例としては,オーディオ機器,時計などにおけるブランド政策をあげることができる。
執筆者:片平 秀貴
アメリカの映画俳優。〈ハリウッドの反逆児〉として映画スターの社会的地位を変革したといわれる。ネブラスカ州オマハ生れ。陸軍士官学校から放校処分を受けたのち,ニューヨークの〈ドラマティック・ワークショップ〉に学び,女優であり演出家であったステラ・アドラーからスタニスラフスキーの演技論と技術を学ぶ。1944年,《ママの想い出》でブロードウェーにデビューし,47年エリア・カザンElia Kazan(1909-2003)演出の《欲望という名の電車》(1951年に同監督により映画化)で一躍スターとなり,〈スタニスラフスキー・メソッド〉とよばれる演技スタイルが流行するきっかけをつくり,〈アクターズ・スチュディオ〉のメンバーとなった。フレッド・ジンネマン監督《男たち》(1950)で映画にデビューし,《欲望という名の電車》,《革命児サパタ》(1952),《ジュリアス・シーザー》(1953)と3年つづけてアカデミー主演男優賞にノミネートされ,4年目の《波止場》(1954)でオスカーとニューヨーク映画批評家賞を受賞,〈メソッド・アクター〉としては最初の映画スターとなった。アンチ・ハリウッド,あるいは反体制的なその言動が〈反社会的脅威〉ともいわれたが,ビート・ジェネレーションにとっては〈反逆的ヒーロー〉となり,カリスマ的存在となった。そのシンボルとなった作品がオートバイの皮ジャン族を描いたラズロ・ベネディク監督《乱暴(あばれ)者》(1954)である。
59年,母のミドルネームをとって名づけた〈ペンベーカー・プロダクションズ〉を設立して《片目のジャック》(1961)を製作,監督,主演し,600万ドルと100万フィートを超えるフィルムを費やして4時間42分の作品に仕上げ(パラマウントは半分の2時間21分に編集し直した),スターの思いあがりを指摘された。さらに大きな赤字を招いた《戦艦バウンティ》(1962)におけるわがまま放題の出演で業界の不評を買った。63年,20万人が参加した人種差別反対ワシントン大行進を積極的に支持。その後,作品にも恵まれず〈過去の人〉となりかけたとき,記録的にヒットした《ゴッドファーザー》(1972)で再度アカデミー主演男優賞に選ばれたが,アカデミー協会のインディアンに対する不当な取扱いに抗議して受賞を拒否。その後,《ラストタンゴ・イン・パリ》(1972)や《地獄の黙示録》(1979)などの話題作に出演する一方で,少数民族や公害問題に傾ける情熱が伝えられている。
執筆者:柏倉 昌美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アメリカの映画俳優。ネブラスカ州オマハ生まれ。幼いころから反抗的で、陸軍士官学校を退学になる。役になりきるスタニスラフスキー・システム演技を学んでブロードウェーでE・カザン演出の『欲望という名の電車』(1948)で成功、カザンによる映画化(1951)に主演、『革命児サパタ』(1952)、『ジュリアス・シーザー』(1953)、『乱暴者(あばれもの)』(1954)などで異様な性的魅力を放ち、強烈な演技で人気スターになった。『波止場』(1954)でアカデミー主演男優賞を受け、『片目のジャック』(1961)では監督兼業に進出、やがて反体制的な態度をとるようになり、『ゴッドファーザー』(1972)ではアカデミー主演男優賞を拒否した。TVミニシリーズ『ルーツ2』(1979)のエミー助演男優賞は受け取った。ハリウッドでも最高のギャラをとり、『ラストタンゴ・イン・パリ』(1972)、『地獄の黙示録』(1979)、『白く渇いた季節』(1989)、『D.N.A』(1996)などに出演した。タヒチ諸島の小島に住んで自然食の研究をしていたこともある。
[日野康一]
『日野康一著『マーロン・ブランド 執念と反逆のスーパースター』(1988・芳賀書店)』▽『マーロン・ブランド他著、内藤誠・雨海弘美訳『母が教えてくれた歌――マーロン・ブランド自伝』(1995・角川書店)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
(高橋郁夫 慶應義塾大学教授 / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 (株)ジェリコ・コンサルティング流通用語辞典について 情報
出典 (株)トライベック・ブランド戦略研究所ブランド用語集について 情報
… 70年代になって,バーブラ・ストライサンド,ロバート・レッドフォードなど数少ないスターが興行成績を保証するといわれたが,《アメリカン・グラフィティ》(1973),《エクソシスト》(1973),《ジョーズ》(1975),《スター・ウォーズ》(1977)などはスターなしで記録的に成功し,ボストン・ファースト・ナショナル・バンクの副社長は,観客をよびよせるのはスターではないと断言した。しかし,それでもなお,ハリウッドの代表的なスターであったジョン・ウェインは,いまなお崇拝者をもっているといわれ,また1本の出演料200万ドルのチャールズ・ブロンソン,《スーパーマン》(1978)に10日間ゲスト出演して225万ドルを得たマーロン・ブランドのような〈スーパースター〉もいる。とはいえ,スターは大衆によってつくられるものであり,かつてサミュエル・ゴールドウィンは,〈スターはプロデューサーではなく神がつくるものであり,大衆は神のつくったものを認めるのである〉といったが,現在のスターは,華麗な生活の代償としてプライバシーと自由を犠牲にして商業主義に奉仕したかつてのスターと異なって,たとえばクリント・イーストウッドのように自分のプロダクションをつくり,あるいはプロデューサーを兼ね,さらには監督を兼ねるのが一つの風潮になっている。…
※「ブランド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加