改訂新版 世界大百科事典 「基礎収支」の意味・わかりやすい解説
基礎収支 (きそしゅうし)
basic balance of payments
国際収支の基調的な収支を示すもので,経常収支(貿易収支,貿易外収支,移転収支からなる)に長期資本収支を加えたもの。資本収支のうち短期資本収支は,為替レートや利子率の変化などによって短期的にかなり変動する可能性があるので,その部分を除いたもので,トレンドとしての国際収支を検討するときに用いられる。基礎収支の不均衡の大きさは,その国の短期の対外資産・負債の変化を示すので,継続的な基礎収支の大幅な不均衡は,その国ないし外国の通貨の信用力に問題を生じさせる可能性がある。発展途上国など経常収支赤字国へ資金を供給するという役割を担うべき国にとっては,経常収支の黒字,長期資本収支の赤字という内容をもった基礎収支のレベルでの均衡が重要視されうる。ただし国際収支表の長期資本収支と経済学的な意味でのそれは一致しておらず,統計上の制約から後者を知ることができないため,基礎収支の重要性を認めながらもこれを公表していない国が多い。1996年1月からの国際収支表の全面改訂に伴い,この概念は廃止された。
→国際収支
執筆者:須田 美矢子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報