日本大百科全書(ニッポニカ) 「堆積学」の意味・わかりやすい解説
堆積学
たいせきがく
sedimentology
地質学の一つの分野で、運搬・堆積作用などで堆積物が形成し、続成作用で堆積岩となる過程を研究する学問のこと。とくに堆積岩の岩質や続成作用を岩石学的に扱う場合は、堆積岩岩石学とよばれる。堆積学のほうがより広い分野を扱うときに用いられている。
堆積学は、堆積構造や岩石組織・岩質の研究などから、砕屑(さいせつ)物がどのような物理的・化学的・生物的条件のもとで生成・運搬され、堆積したかを明らかにし、種々の堆積の成因を明らかにすることを目的としている。さらにそれらを基礎として層相解析などを行って堆積環境を解明し、堆積盆の復原を目標とする分野も含む。このとき示相化石なども利用するため古生物学と深いかかわりがある。
堆積学は、同様の研究を行う層序学と明確にある一線で境され区別されるわけではないが、層序学のほうが地層単位でものを扱い、地層の積み重なり方に重点を置いて多くの地域で層序対比を行うのに対し、堆積学のほうは、より小規模な堆積構造や細かい岩石学的記載に重きを置く傾向がある。もちろん堆積学・層序学は密接な関係にあり、互いに切り離して考えられるものではない。
堆積物の成因や堆積環境の復原などのほかに、未固結の堆積物が物理的・化学的変化を受けて堆積岩になってゆく過程、すなわち続成作用を解明していくのも堆積学の重要な分野である。堆積物が埋没していくにつれ温度・圧力が増していき、それに応じて異なる鉱物が生成され、また堆積岩の諸性質が変化していく過程を明らかにする。また、これらの事実を逆に利用して、地表にみられる堆積岩の温度・圧力履歴を明らかにすることができる。この分野は、低変成度の変成岩岩石学の分野と重なる。また堆積学は、石炭・石油など堆積岩起源の鉱床を扱う鉱床学の分野でも、鉱床の成因の解明や鉱床探査において、多大の貢献をしている。
[村田明広]