鉱床学(読み)コウショウガク(その他表記)Economic Geology

デジタル大辞泉 「鉱床学」の意味・読み・例文・類語

こうしょう‐がく〔クワウシヤウ‐〕【鉱床学】

地質学の一部門。鉱床形態・構成鉱物成因などを研究する。

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精選版 日本国語大辞典 「鉱床学」の意味・読み・例文・類語

こうしょう‐がくクヮウシャウ‥【鉱床学】

  1. 〘 名詞 〙 地質学の一分科。鉱床の成因、形状分布、含有物、母岩変化、地質学との関連などを研究する学問

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉱床学」の意味・わかりやすい解説

鉱床学
こうしょうがく
Economic Geology
Resource Geology
Mining Geology

地殻に分布する金属・鉱物資源およびエネルギー資源を対象として、地球科学の分野から総合的に研究する学問。地球科学は、地質学、岩石学鉱物学、地球化学、地球物理学、気象学、海洋学、水文学、天文学などさまざまな学問領域よりなる。鉱床学は、これら地球科学の種々の学問領域と密接に関連して構築されている学問分野であるが、とりわけ地質学、岩石学、鉱物学、地球化学、地球物理学、それに金属・材料工学などと密接な関係をもっている。鉱床学の重要な目標の一つは、鉱床の生成を地殻の中における有用元素・鉱物の濃集過程としてとらえ、その生成の過程・機構を地殻構造発達史のなかで、どのような地球科学的要因によるかを明らかにするところにある。また、鉱床学は地球資源の効率のよい探査手法確立や資源有効利用に供することを目的とする学問領域であるため、資源分布地域の野外調査やそこから得られる地殻物質の分析・検討のほかに、近年急速に発達してきたさまざまな実験的研究、さらに物理・化学的理論などを統合的に解析する手法も重要になってくる。資源利用という課題は、人間社会と密接に関連する。すなわち、資源の有効利用や持続可能な資源の利用という観点より、資源量評価などを主眼とする資源経済学や資源利用により誘引される地球環境問題をも視野に入れた新分野導入も今後鉱床学にとって重要なものとなってくる。

 鉱床学は地球科学の諸部門、これら地球科学の各部門とのかかわり合いにおける重点の置き方の違いにより、次のような二つの異なった側面をもっている。その一つは地質学・鉱物学との関連に重点を置く側面で、これは鉱床地質学とよばれる学問体系をつくる。これは鉱床学の学問体系において初期段階を構成し、きわめて重要で基本的な性格をもつものである。その学問分野は、実在の鉱床について、産出状況、形態、構造、構成鉱物など鉱床に関する諸事実・現象を忠実に記載するとともに、これを取り囲む地域の地質を調査研究し、鉱床の占める地質学的位置を明らかにするところにある。野外調査研究の次には、地質的位置の明確な鉱石・岩石片を、偏光顕微鏡その他の各種測定機器を駆使して、鉱石構成鉱物の識別・同定、鉱石組織から鉱物共生を知るだけでなく、鉱床の母岩の岩石学的性質を吟味する。さらには地質温度計、圧力計などを利用して鉱床生成時の物理化学的条件(とくに温度・圧力)の評価を試みる。地質学・鉱物学側面からの鉱床学はさらに地球化学、とくに安定同位体地球化学、微量元素地球化学と関連することにより、造鉱石元素の起源や鉱床生成に関与した鉱化流体(鉱液)の起源、生成温度などに関する情報が得られるようになった。二つ目の側面は、室内における実験的研究および物理・化学的理論的考察の学問分野である。実験的研究は、自然界に分布する物質系の相関係究明を目的とし、その結果と自然現象を対比させ、さらには理論的解析を試みることによって、鉱床生成条件を構築する学問分野である。鉱床成因論に対する寄与は大きいが、その知識の自然界における諸現象の解釈への適用にはまだ課題が多い。鉱床学は、自然科学の一つとして存在価値があるだけでなく、鉱床の探査・開発やその利用にたいへん役だつので、この方面の研究に力点を置く分野もある。とくに、この分野は鉱山地質学あるいは探査工学ともよばれる。

[金田博彰]

『立見辰雄編『現代鉱床学の基礎』(1977・東京大学出版会)』『飯山敏道著『鉱床学概論』(1989・東京大学出版会)』『番場猛夫著『いま地球の財産を診る――鉱床学と鉱物資源』増補改訂版(1993・教育出版センター)』

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