化学辞典 第2版 「塩化バナジウム」の解説
塩化バナジウム
エンカバナジウム
vanadium chloride
【Ⅰ】塩化バナジウム(Ⅱ):VCl2(121.85).二塩化バナジウムともいう.VCl3を熱分解すると得られる.淡緑色の六方晶系結晶.密度3.23 g cm-3.900 ℃ 以上で昇華する.潮解性があり,冷水に可溶.熱水で分解する.水に溶けて紫色の水和した V2+ のイオンを生じるが,すぐに空気酸化される.還元剤に用いられる.[CAS 10580-52-6]【Ⅱ】塩化バナジウム(Ⅲ):VCl3(157.30).三塩化バナジウムともいう.VCl4を熱分解(150 ℃)して得られる.紫色の固体.
2VCl4 → 2VCl3 + Cl2
密度3.0 g cm-3.赤熱するとVCl2とVCl4に分解する.水にきわめて易溶,エタノールに可溶,エーテルに不溶.ポリエチレン製造触媒,バナジウム金属や有機バナジウム化合物の製造に用いられる.[CAS 7718-98-1]【Ⅲ】塩化バナジウム(Ⅳ):VCl4(192.75).四塩化バナジウムともいう.金属バナジウムを熱して塩素を通じると得られる.赤褐色の油状液体.密度1.82 g cm-3.融点-109 ℃,沸点148.5 ℃.空気中で発煙し,常温でも Cl2 とVCl3に解離する.水ではげしく加水分解し,青色の酸化バナジウム(Ⅳ)イオンの溶液となる.濃塩酸,エタノール,エーテルに可溶.重合触媒の成分(TaCl5との共触媒)に用いられる.[CAS 7632-51-1]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報