夕去(読み)ゆうさり

精選版 日本国語大辞典 「夕去」の意味・読み・例文・類語

ゆう‐さり ゆふ‥【夕去】

〘名〙 (「さり」は来る、近づくの意を表わす動詞「さる(去)」の連用形の名詞化) 夕方になること。また、その時。夕方。夕刻。ゆうされ。ゆさり。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
古今(905‐914)離別・三九七・詞書「あめのいたうふりければ、ゆふさりまで侍りて、まかりいでけるをりに」
[語誌](1)上代では「夕(ゆふ)さる」という動詞形が使われていたが、中古にはその名詞形「夕さり」で夕方という時間帯を表わすようになった。同じ時代に類義の「夜(よ)さり」も使われているが、「夜さる」という動詞形は、上代には見られない。従って「夜さり」は「夕さり」の影響、または変化によって成立したものと思われる。類例に「ゆふだち(夕立)」が変化した「よだち」がある。なお、「ようさり」という形も中古に見られるが、これは「夜さり」「夕さり」のどちらから転じたのかは明らかではない。
(2)主として仮名文学に現われるが、中世になると民衆の口頭語となっていたことが、キリシタン資料などからうかがえる。なお「日葡辞書」には「ようさり」「よさり」は採録されず「ゆうさり」だけが見える。
(3)もともと時間帯を表わす語はその指し示す対象が曖昧であるが、この語も夕と夜の境の不分明発音類似などから、中世には「夜さり」との混同が起きている。本居宣長は、「今の俗言に、夜を夕さりとも夜さりとも云は」〔古事記伝‐二〇〕と近世には夜の意味で使われていることを記している。

ゆう‐され ゆふ‥【夕去】

〘名〙 (「ゆうざれ」とも) 「ゆうさり(夕去)」の変化した語。
蜻蛉(974頃)下「ゆふされのねやのつまづまながむればてづからのみぞ蜘蛛もかきける」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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