吉行淳之介(じゅんのすけ)の中編小説。1965年(昭和40)から78年にかけて、断続的に7回、各誌に分載。78年9月、新潮社刊。中年の男佐々と22歳の「処女」杉子との奇妙な肉体関係を描く。佐々は杉子のほかにも女との交渉があり、いわば女の性をうかがう者の立場にあるともいえようが、それでも杉子の「バージン」にこだわり、「中途半端な状態」の自分を意識せざるをえない。『夕暮まで』の標題はそこにもかかわるであろう。多様な性の形が幻想画のように繰り広げられ、『驟雨(しゅうう)』以来の作者の異性追究の一つの到達がここに示された。野間文芸賞受賞。
[保昌正夫]
『『夕暮まで』(講談社文庫)』