無線通信において、通信衛星から強い指向性を有する複数のアンテナによって電波を送信し、地球上の複数の特定地域に対し個別の通信路を設定することにより接続回線を増加させる方式。ならびに、無線LAN(ラン)においては、複数のアンテナを使用して電波を送信し、空間的に多様な伝搬状態を生じさせることにより、通信路を増大させるという思想による接続方式。この場合、空間的に多様な伝搬状態を生じさせると、その一部に生じた細い通路を電波が通り抜け、他の通路からの伝搬波とも分離・合成が行われるため、単一通路の場合よりも通信路が増大するのである。略してSDMAという。1970年代後半に、衛星通信において、衛星側から同一周波数で送信する複数の電波が混信、干渉しないように、指向性の強いスポットビームアンテナを使用して別々の地球局に向けて送信する多元接続法が実現している。これは、周波数分割多元接続(FDMA)や時分割多元接続(TDMA)などと思想の異なる多元接続法である。アンテナの指向性により地球表面でのフットプリント(電波の照射面積と形状)は自由に拡大縮小したり形状を変更したりすることができる。SDMAは、いまや軍事目的の通信には欠かすことのできない通信手段であるが、これと、従来のFDMAやTDMAを組み合わせて、多元接続の可能性を増大させている。この接続による衛星通信を行うTDMAでは、通信する地上の2局間の同期の確立に多少の困難を伴うため、同期信号だけはグローバルビーム(地球の半球面をカバーするビーム)のままにする簡易な方法もある。
一方、SDMAはMIMO(マイモ)(multiple input multiple outputの略)という無線LANへの利用が進んでいる。この方法はスマートアンテナ技術といって、複数のアンテナで同時に異なるデータを送信し、受信側で合成して疑似的に広帯域回線とすることにより、無線LANの速度を2倍にあげることが可能とされる。このアイデアは1970年ごろからベル研究所周辺の技術者に始まったが、1996年時点では実験室レベルの研究であった。しかし、2010年には商品化されて日本にも導入された。2本のアンテナによる電波伝播(でんぱ)の改善効果によって、ユーザー(利用者)が利用できる5.2ギガヘルツ帯のIEEE802.11a(無線LANの規格。2011年の時点で最速の規格)の伝送速度の限界である54メガビット毎秒(Mbps)の2倍の108メガビット毎秒まで向上させた。さらに、2011年には3本のアンテナを使用して3倍の性能も実現している。このシステムは雑音に強く、屋内などの多くの障害物や反射物が存在する通信環境での運用を大幅に改善する効果がある。
[石島 巖]
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