化学辞典 第2版 「多段操作」の解説
多段操作
タダンソウサ
multistage process
1回の操作では達成できない性能や効力を得るために,反応,圧縮,抽出,蒸発操作などを複数回繰り返すことをいう.流通操作のうち,完全混合流れの槽型反応器では,高収率を得ようとすれば装置容積が大きくなり,また押出流れの管形反応器では,反応の遅いものでは管長が長くなって,ともに経済的に有利でなくなる.そこで,これらの短所を補う流通操作として多段連続反応槽がある.また,反応熱が大きいときには,装置内で温度分布の不均一が生じるのを避けるため,断熱反応器を数個直列に分けて,各断熱反応層の間に熱交換器や冷却または加熱用ガスを導入したものを用いることがある.これを多段断熱反応器とよぶ.気体を高圧に圧縮するとき,1段で行うと高圧縮比のため温度上昇や漏れが大きくなるので,気体を冷却しながら多段に分けて圧縮を繰り返す.これを多段圧縮という.1回の抽出操作では期待する性能が得られないとき,何回かこれを繰り返す方法を多段抽出といい,並流接触操作と向流接触操作がある.直列・多段の蒸発室において,高温に予熱した液体をフラッシュ蒸発させ,蒸気は高温から低温へ,液体は低温から高温に向流に流す.このように,蒸気の凝縮熱を液体の加熱に用いてエネルギー効率をあげる方法を多段フラッシュ蒸発という.多段操作では,収率などとあわせて経済的な因子を考慮した最適な段数が存在する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報