多聞城跡(読み)たもんじようあと

日本歴史地名大系 「多聞城跡」の解説

多聞城跡
たもんじようあと

[現在地名]奈良市法蓮町

佐保丘陵の眉間寺みけんじ山上にある。佐保川を南に、西は堀を隔てていわゆる聖武天皇陵に接し、東は空堀を隔てて善勝寺ぜんしようじ山に連なり、京都への要路である奈良坂を眼下に望む高台地に立地する。

天文二三年(一五五四)松永久秀は三好長慶の老臣として信貴山しぎさん城に拠り、永禄二年(一五五九)六月に筒井順慶を破って奈良に入り、翌三年、眉間寺山上の城郭構築に着手、眉間寺山を改め「多聞山たもんやま城」と名付け(興福寺別当次第)、壮麗な殿舎・天守閣多聞を構えた。多聞山城と名付けたのは「平城坊目考」に「久秀常ニ信貴山多聞天を信仰す、因て佐保山の塁を多門と名付く」とある。この多聞山城は日本城郭史上、天守閣をもつ近世城郭の発祥となった四層の多聞櫓をもった独創的な構造の城郭であった。現在は城跡に奈良市立若草わかくさ中学校が建てられていて、大堀切・櫓台・井戸跡・土塁の一部を残すのみとなっていて昔日の面影は、昭和五三年(一九七八)校舎増築によりさらに失われていった。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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