若者宿(読み)ワカモノヤド

デジタル大辞泉 「若者宿」の意味・読み・例文・類語

わかもの‐やど【若者宿】

若者組に属する青年が集まったり寝泊まりしたりする家。若衆宿。泊り宿。泊り屋。→娘宿

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精選版 日本国語大辞典 「若者宿」の意味・読み・例文・類語

わかもの‐やど【若者宿】

  1. 〘 名詞 〙 村落の未婚の若者が夜集まって、仕事をしたり話し合いをしたりして親睦をはかり、寝泊まりをする宿所。若衆宿。
    1. [初出の実例]「若者宿の宿頭に、一方では若者中の一人がなるのに」(出典:婚姻方式の変遷(1941)〈柳田国男〉九)

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改訂新版 世界大百科事典 「若者宿」の意味・わかりやすい解説

若者宿 (わかものやど)

若者宿という呼称は,(1)若者組集会所,(2)若者たちの宿泊所,またはたむろする家屋,の双方に対して用いられる。(1)は若者組には必ず付属し,常設と臨時の2種があるが,一般的には民家の一部を借用するもので,ただ単に宿(やど)と呼ばれることが多かった。四国では専用の建物をもつ地域があったが,専用の施設が普及したのは明治以降,若者組が青年会へ変貌したのちのことである。そのほか,庵(あん)とか社務所公会堂,公民館などを使用する所もあった。民家の場合は,気やすい家,新婚の家,大きな家などが選ばれ,謝礼として食料,履物,薪などの日用品が贈られた。集会所では若者組の会議や加入式,また常設の場合は,そこで年少の若者へのしつけや制裁も行われた。なお,宿泊所を集会所として利用したり,逆に集会所に一部の若者が宿泊した例もあるが,それらは宿泊所としての若者宿が発達していた関東以西に多くみられた。次に(2)には,若者宿のほか,寝宿,泊り宿,遊び宿などの呼称がある。これらもその大半は民家の一部を借用するもので,条件は(1)とほぼ同じだが,なかには網元の家に宿泊し,出漁をともにする形態もあった。新婚家庭の家を用いるのは,単に気やすさからだけではなく,結婚にあやかるという呪術的な意味があったとみられる。そのほか,農家の倉とか,東北地方の日本海側のように,夏季に櫓(やぐら)を建てて寝泊りするもの,関東と中部地方の一部のように,冬季に〈ムロ〉という一種の竪穴式住居をつくって寝泊りするような例もあった。ところで,若者組と宿泊所としての若者宿が密接に結びついていたのは,おもに西日本の沿海地方であった。その場合,(1)若者組の構成員が思い思いに若者宿へ宿泊する型,(2)若者組とはまったく別個に若者宿の生活が行われる併存型,(3)組織化された若者組がなく,若者宿の生活が一種の不定形な若者組に相当する型,とに分けられる。(3)の場合は,その宿入りが若者組の加入式に相当した。いずれにせよ,西日本の若者宿には主として婚姻の媒介機関としての性格があった。それゆえ,男子は数え年15歳ごろから全員が宿へ加入したが,性の問題が絡むので,兄弟が同じ宿を利用することは避けていた。宿は一地域に数ヵ所設けられていた。若者たちは自家の労働を終えて夕食をすますと宿へ集まり,娘宿の娘と交流をしたり,〈よばい〉をしたりして将来の伴侶を求めた。こうした宿生活は結婚に至るまで続けられたが,婿の両親が別棟に隠居をするまで,若夫婦が従来の寝宿に寝泊りする地方もあった。配偶者の選択には若者の仲間が助言や助力をし,ときには〈嫁盗み〉も行われた。また宿の主人が宿親として若者に対するしつけや助言,忠告を行い,婚礼に際して仲人となることもあった。一方,若者たちは宿子と呼ばれ,宿親や宿子どうしとは生涯にわたって親密なつきあいが行われた。若者宿は明治以降しだいに廃れたが,西日本の漁村の一部など今日もなお若者宿の伝統を維持している地域もある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「若者宿」の意味・わかりやすい解説

若者宿
わかものやど

若者組の本拠とする建物。村内の有力者の家などにおかれるのが普通であったが,なかには専用の建物をもつところもあった。また,未婚の青年たちが合宿する寝宿であったところと,寝泊りはせずに,単に集会所として使用したところがあった。若者宿の頭や宿親の指導,監督のもとで,若者たちは,夜なべ仕事のかたわら,村人として知らなければならない知識や技術を学び,また娘宿の女子とも交流して結婚の準備を整えたりした。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「若者宿」の解説

若者宿
わかものやど

村の青年男子が集会・仕事・遊び・寝泊りなどのために集まる場所。若者組の集会所としての性格が強い宿と,仕事宿・遊び宿・寝宿(ねやど)とは同じものではない。前者は新加入者の承認や若者条目のいいきかせ,定例会での相談などの場で,役職や構成員の序列に従って役割や行動が厳格に定まっている公的なものであり,後者は仲間内の私的な集まりともいえる。2種類の宿が併存する場合もあった。祭などの際に設けられる臨時の宿もある。

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世界大百科事典(旧版)内の若者宿の言及

【男子集会所】より

…メラネシアや西アフリカには,男子が女子供を秘儀によって排除する秘密結社ないし男子結社が発達しているが,それらは呪術的な彫刻や装飾を施したりっぱな男子舎屋をもっている。他方,年齢集団がつよいインド東北部のアッサム地方のように,青年男子の若者宿が成人男子すべての集会所になっている場合も多い。一般に女子の立入りは厳禁だが,北米インディアンのようにクラブ化した秘密結社の集会所では,このタブーは緩んでいる。…

【年齢集団】より

…典型的な年齢階梯制は東アフリカのシャリ・ナイル語系,クシ語系の牛牧民やその周辺のバントゥー語系の農耕民にさまざまな変差でみられるが,もちろん,アフリカ以外の部族社会にもひろく分布し,日本も含め若干の文明社会にも散見される。 少年は思春期になると,家族とくに母親や他の女性から厳格に隔離され,若者宿に集団的に寝泊りし,激しい肉体的試練や部族の伝統について年長者から教育をうけるとともに,軍事行動や労働力の主体として長期間その役割を果たす。この間,成女式を終えた娘や寡婦と多少の性交渉をもつが,結婚は青年階梯を経過するまでは許されない。…

【毛遊び】より

…若者が夜,外に出て遊ぶ風習は各地にあったが,毛遊びはまとまった野外の集いの形をとっているところに特色がある。若者や娘が仲間どうしで寝泊りする若者宿や娘宿の習俗の一形態で,一人前と認められる15歳ごろから結婚するまでの間参加する。娘宿のあった村では,若者が娘宿へさそいに来て,いっしょに毛遊びに行ったという。…

※「若者宿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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