慶安御触書(読み)ケイアンノオフレガキ

デジタル大辞泉 「慶安御触書」の意味・読み・例文・類語

けいあん‐の‐おふれがき【慶安御触書】

慶安2年(1649)江戸幕府が公布した触れ書き。全32か条と奥書よりなる。年貢確保をめざし、農民統治のため日常生活をこまかく規制したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「慶安御触書」の意味・読み・例文・類語

けいあん‐おふれがき【慶安御触書】

  1. 江戸幕府が慶安二年(一六四九)二月、郷村、農民を対象として公布した全三二条の御触書。幕府の土地農村制度の確立に伴って発布された勧農的条例で、公儀法度の遵守地頭代官への服従を説くことに始まるが、特に農業技術の指導と農民の消費生活規制につとめ、年貢、諸役の確保と、農村の維持をはかることを主眼として立案されたもの。慶安の御触書

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改訂新版 世界大百科事典 「慶安御触書」の意味・わかりやすい解説

慶安御触書 (けいあんおふれがき)

1649年(慶安2)2月26日,江戸幕府が公布した〈諸国郷村江被仰出〉という触書を通常〈慶安御触書〉〈慶安の御触書〉といっている。全32ヵ条からなり,幕府の農村法令では最も詳細なもので,農民の日常生活,農業経営,農民の心得などをこまかに規制している。まず第1条では幕法の順守領主への服従,村役人を親と思えなど,封建制下の身分・階層性を強調している。農業経営の場合,たとえば第10条で肥料についていっているが,この触書の最大の特徴は農民生活への規制である。酒や茶の購入禁止(第6条),雑穀主食とする(第11条),さらに大茶を飲み夫のことをおろそかにする女房を離別するなどと干渉し(第14条),最後に年貢さえ済ませば百姓ほど心やすいものはないと,人間性を無視した封建領主としての幕府の意図が露骨に表れている。なお,この触書に類似した事例に1619年(元和5)12月の〈直江兼続四季農戒書〉がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「慶安御触書」の意味・わかりやすい解説

慶安御触書
けいあんのおふれがき

1649年(慶安2)2月、幕府が全国の農民あてに公表した触書。正しくは「諸国郷村江被仰出(おおせいださる)」という表記の、全32条からなる令書である。幕府は、おりからの凶作もあって1641年(寛永18)ごろから農政に取り組んできたが、それらの農政法令の集大成でもあった。重点は、農民たちの支配への服従や、生活の仕方、農業生産のあり方についての心構えをさとしたことにあって、教諭書としての性格が強い。「地頭は替(かわ)る者、百姓はその名田(みょうでん)を便りとする者」という文言や、「年貢さへすまし候(そうら)へは、百姓程心易きものはこれなく」などという文言によって知られている。この触書は、こののち、江戸時代を通じて、幕藩領主の農政の原則を示すものとして重要視された。

[佐々木潤之介]

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百科事典マイペディア 「慶安御触書」の意味・わかりやすい解説

慶安御触書【けいあんおふれがき】

慶安2年(1649年)に江戸幕府が農村を対象に公布した触書。全32条。江戸時代を通じて農民支配の根本原則となった法令であると同時に農民の心得書。公儀法度や代官,名主,組頭ら上級者への服従はもとより,〈酒や茶は買うな,たばこは喫(す)うな〉など消費生活の細部までも規制し,封建制下の身分・階層性を強調。また農業技術の指示などを詳細に指導して年貢確保を図った。→士農工商

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世界大百科事典(旧版)内の慶安御触書の言及

【近世社会】より

…かつて戦国時代には,相伝の私領たる関係を部分的にも残していたものが,すべて将軍または大名の給与地になったことである。そして大名のなかにも所領は預りものとする意識が生まれ,慶安御触書のなかに〈地頭ハ替もの,百姓ハ末代其所之名田を便とするもの〉との表現をみるにいたる。領主層の知行は,将軍代替りごとに渡される知行状によって,はじめて安泰が確かめられることになった。…

※「慶安御触書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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