大福餅の一種。江戸時代に京坂地方で流行、のちに江戸の浅草、下谷(したや)などに及んだ餅で、餡(あん)を包んだ餅に大仏の焼き印が押してあった。『本朝世事談綺(せじだんき)』や『雍州府志(ようしゅうふし)』によると、京都の方広寺大仏殿や京極誓願寺の門前で商われたとある。また井原西鶴(さいかく)の『好色一代女』には大坂天満(てんま)の大仏餅とある。このほか奈良名物の大仏餅には、鎌倉時代の豪傑朝比奈三郎が、力づけに餅を食べて東大寺の梵鐘(ぼんしょう)をついたところ、その鐘の音が三日三晩にわたって南都全域に鳴り響いていたという伝説がある。大仏の巨体と剛力の武者が結び付いて名物餅が生まれたわけだが、どの大仏餅にも力餅的な性格がもたされているのが特徴。いまの奈良の大仏餅は求肥(ぎゅうひ)餅である。
[沢 史生]
…〈大福へ紅がらで書くいせやの賀〉という川柳のように,還暦や喜寿の祝いに〈寿〉の1字を紅で書いてくばり物にすることもあった。なお,江戸初期から京都名物の一つに数えられた大仏餅は,滝沢馬琴が〈江戸の羽二重もちに似て餡(あん)をうちにつゝめり,味ひ甚だ佳なり〉としているように,大福餅の高級品というべきものだったようである。【鈴木 晋一】。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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