日本大百科全書(ニッポニカ) 「大元神楽」の意味・わかりやすい解説
大元神楽
おおもとかぐら
島根県邑智(おおち)郡一帯と江津(ごうつ)市、浜田市の一部で大元神の式年祭(5年または7年、あるいは13年目ごと)に行われる神楽。出雲(いずも)流神楽の一つで、大元舞ともいわれる。祭場は今日では神社の拝殿に多く設けられ、東方の柱を本山(もとやま)、西方の柱を端山(はやま)としてそれぞれの柱に俵を結び付け、ここに集落の祖霊神的性格をもつ大元神ほか諸神を勧請(かんじょう)し、中央につるした天蓋(てんがい)の下で神楽が行われる。この神楽はもと神職のみの執行であったが、明治以降は神事および神事的な採物舞(とりものまい)を神職が受け持ち、演劇的要素をもつ神能(しんのう)の演目を各集落の舞手が担う。「御綱(みつな)祭」の段に至ると、藁蛇(わらへび)を通して神霊が託太夫(たくだゆう)の体に憑依(ひょうい)し失神状態に陥った託太夫が神託を発するという、今日では数少なくなった神がかり、託宣の形態がみられ、このような古風を残している点に大元神楽の特色がある。国の重要無形文化財に指定され、2004年(平成16)には江津市に大元神楽伝承館が開館した。
[高山 茂]