託宣(読み)タクセン

デジタル大辞泉 「託宣」の意味・読み・例文・類語

たく‐せん【託宣】

[名](スル)神仏が人にのりうつったり夢の中に現れたりして、その意志を告げること。また、そのお告げ神託。→御託宣ごたくせん
[類語]神託お告げ示現

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精選版 日本国語大辞典 「託宣」の意味・読み・例文・類語

たく‐せん【託宣】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 神のことば。神のおつげ。神が人にのりうつったり、夢の中に出現したりして人間に伝える意志。また、祈願した事柄に対する神の答え。神託。
    1. [初出の実例]「八幡大神託宣向京」(出典続日本紀‐天平勝宝元年(749)一一月己酉)
  3. 一般に、告げごと、言い分。多くはあざけりの意を含めていう。
    1. [初出の実例]「コリャ太夫、あらたまったるお託宣」(出典:浮世草子・傾城歌三味線(1732)三)

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改訂新版 世界大百科事典 「託宣」の意味・わかりやすい解説

託宣 (たくせん)

神託ともいう。神のお告げ。神が人に乗り移り神の意志を伝えること。この場合,人が神に教えを乞うもの,神が人に祭事などを求めて予告するもの,などがあり,そのときの状態を神がかりといった。神が乗り移る対象の多くは,女性,小児であり,また男性神職のことも歴史上よくみられる。《日本書紀》には,神功皇后がみずから神託をうかがったことがみえ,また和気清麻呂宇佐八幡に参宮して託宣を受けており,国家の大事に際し神意をうかがう例はきわめて多い。とくに八幡神は託宣の神といわれ,皇位継承において重要な役割を果たした。諸社寺に伝わる託宣,神異,縁起などを編集した書物を託宣記といい,《八幡宇佐宮御託宣集》などがある。中世後期以降は,伊勢,石清水,春日の三社の託宣を掛軸に仕立て,床の間に飾って信仰の対象とする三社託宣が,広く庶民の間に流行した。
神託
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「託宣」の解説

託宣
たくせん

神託・予託とも。神霊が人にのり移ったり夢の中に出現して,意志を表したり予言を告げること。歴史的には九州の宇佐八幡宮に起因する八幡神が,託宣を利用して地方神から全国的に祭祀される神へと発展した例が知られる。東大寺大仏鋳造に際しての託宣や,道鏡(どうきょう)が皇位を奪おうとした事件に際し,和気清麻呂(わけのきよまろ)が宇佐八幡宮の神託をもってその野心を退けたなどが有名。鎌倉末期には八幡神の託宣や神異をまとめた「八幡宇佐宮御託宣集」が編纂された。新興宗教の天理教や金光(こんこう)教なども,神が教祖を通じて託宣を発することが契機となって創始された。現在でも民間宗教や島根県の大元神楽(おおもとかぐら)などの民俗芸能には,行者などが神がかりして託宣を行うシャーマニズムの形態がみられる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「託宣」の意味・わかりやすい解説

託宣
たくせん

神託ともいう。神が人に憑 (かか) り,その意志を述べることをいう (→神憑り ) 。『日本書紀』仲哀天皇の条には,神が皇后に託 (かか) り,南九州の熊襲を討つよりも北方の新羅国を討てと神託があったが,天皇はこれを信じなかったため崩じたとある。このように神が意志表示をなすのに対し,人間が神の意志をうかがい求める場合がある。『日本書紀』崇神天皇の条には,天下に疾疫が広がったとき,天皇はその原因を知るために卜問 (うらどい) をなし,神はヤマトトトヒモモソヒメに憑りその意志を示したという。和気清麻呂が受けた宇佐八幡宮の神託は有名であるが,信仰の弛緩に伴って偽りも生じ弊害も生れた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「託宣」の意味・わかりやすい解説

託宣
たくせん

神託

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世界大百科事典(旧版)内の託宣の言及

【神託】より

…神が,不思議な夢や神憑(かみがかり)などを通して,その意志を人間に伝達すること。託宣と同義に使われる場合もある。一般には〈神のお告げ〉をさすが,厳密には〈神の言葉〉をいう。…

※「託宣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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