大山庄(読み)おおやまのしよう

日本歴史地名大系 「大山庄」の解説

大山庄
おおやまのしよう

篠山盆地の北西にあった京都東寺領庄園。現篠山市の旧大山村とほぼ一致する庄域で、篠山川支流の大山川流域を中心とした。旧大山村は近世の追入おいれ大山宮おおやまみや園田そのだ分・大山上おおやまかみ荒子新田あらこしんでん石住いしずみ高倉たかくら一印谷いちいんだに大山新おおやましん徳永とくなが町之田ちようのた長安寺ちようあんじ北野きたの北野新田・大山下・明野あけの東河地とうこうちの大山組一七ヵ村を母胎としている。

〔成立期の大山庄〕

東寺領大山庄は、承和一二年(八四五)九月一〇日の民部省符案(東寺文書。以下の記述は主として東寺文書・東寺百合文書・教王護国寺文書に依拠し、これらについては必要に応じ個別の文書名を記した)によれば、空海死後経営困難に陥っていた綜芸種智しゆげいしゆち院を売却した代金で、丹波国多紀たき河内かわち郷内に買得した田地が官省符によって、正式に東寺伝法会料所として公認されたことに始まる。この時の四至「東限公田、西限刺山、南限川、北限大山峯」から、成立当初より旧大山村に近い庄域を有したことが知られるが、実際に東寺に帰属したのは一条三大山里・二条四桃本里と独条の一部に位置する墾田九町余と堤長七〇丈の池一処、野林三五町の計四四町余にすぎなかった。大山庄では一一世紀半ばまで、承和の官省符によって付与された寺田が東寺支配の核であり、東寺は官物免除の有利な認定を求めて、長保四年(一〇〇二)九月一九日の東寺伝法供家牒、寛弘六年(一〇〇九)一〇月二八日の東寺伝法供家牒など、寺田の面積・坪付を書上げて国司に申請し、国司は国図・馬上帳で権利関係・耕作状況を確認し、官物の免除を認定した。

康平四年(一〇六一)七月の大山庄坪付案はそれまでの官省符の寺田範囲を超えた大山庄域全体の耕地状況を書上げたものであり、大山庄の田地は独条の二ヵ里、一条一里から五里までの五ヵ里、二条二里から五里までの四ヵ里の計一一ヵ里・五八町四段余となっている。当庄の条里は実際の条里地割とは別次元の、国衙の土地台帳上における土地把握・表示方式としての条里であるが、坪付に付された地名などから、一条の南に二条が位置し、里は東から西へ一里・二里と進み、一条と二条は一里分ずれて接続すること、一条一里・二里・三里の各里はだいたいにおいて大山川の主要支谷池尻いけじり谷・一印谷・大山谷に対応し、二条は大山川に沿い、支谷が長く延びて一条より北にも可耕地が広がっていた場合、独条とされたことが明らかである。成立時の墾田は一条三大山里と二条四桃本里を中心としていたが、この二ヵ里は南北に接続し、大山川支流の谷々のうちの大山谷に比定される。


大山庄
おおやまのしよう

山形盆地の南東部、立谷たちや川より南、川より東の平野・山間部および上山盆地を含む古代からの庄園。北は成生なりゆう庄、西は山辺やまのべ庄・大曾禰おおそね庄、南は北条ほうじよう庄・屋代やしろ庄と接する。現在の山形市中東部ならびに上山市全域に比定される。「和名抄」大山郷の名を継ぐとする説もあるが、大山郷は古代村山郡に属したとするのが定説であり(当地は古代最上郡に属する)、現西村山郡河北かほく谷地やちいちつぼ遺跡から「大山郷」と墨書した土器が出土したことなどもあって、この説は根拠が薄くなっている。

安元二年(一一七六)二月日の八条院領目録(内閣文庫蔵山科家古文書)に「庁分御庄」として「出羽国大山 成生」とある。これにより少なくとも一二世紀中頃には天皇家領となっていたことが知られるが、近隣の庄園の成立から、一一世紀前半に摂関家領として成立し、天皇家に寄進されたと推定することも可能である。鎌倉時代末期には成生庄とともに亀山天皇の皇女昭慶門院領となっており(嘉元四年六月一二日「昭慶門院領目録」京都大学蔵古文書集)、八条院―春華門院―順徳天皇―後鳥羽天皇―後高倉院―安嘉門院―亀山天皇と伝領されたことが知られる。


大山庄
おおやまのしよう

大山川流域、現大山町を中心とする一帯に比定される広域通称名。その範囲は未詳であるが、天正八年(一五八〇)四月一三日の田北鑑重(紹鉄)位牌銘(大友史料)に「大山丿庄万々金村之内、松原ト申小村」とあり、現町域南部の松原まつばらを含んでいる。ただし「大友家文書録」では日田郡五馬いつま井手いで口松原村とする。なお日田郡司職次第(東京大学史料編纂所謄写本)の大蔵永俊の項では日田庄五ヵ郷のうちとして大山村とみえる。文禄五年(一五九六)五月一九日の戸倉友重宛行知行目録写(毛利高棟文書)に日田郡大山庄の内として、まゝかね村・中山なかやま村・おきりはた村・下かたセこ村とあり、毛利高政がこれら五〇〇石の地を森織部に宛行っている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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