大漢族主義(読み)だいかんぞくしゅぎ(その他表記)Dà Hàn zú zhǔ yì

改訂新版 世界大百科事典 「大漢族主義」の意味・わかりやすい解説

大漢族主義 (だいかんぞくしゅぎ)
Dà Hàn zú zhǔ yì

多民族からなる中国において,圧倒的多数を占める漢族優越を前提として,他の少数民族を差別圧迫し,各民族の平等の権利と独自の文化を否定しようとする考え方をいう。王朝体制下でつねに意識された華夷思想,さらには近代のブルジョア民族排外主義の表れでもある。すでに満州族の支配する清朝を打倒して成立した中華民国の初期,孫文は,漢・満・モンゴル・回・チベット五族共和を提唱し,漢族への同化を色濃くもった性格のものとはいえ,民族の統一をはかった。1924年,国民党の一全大会においては,少数民族の自決権を基礎とした中華民国の国家体制が主張された。しかし1921年に結成された中国共産党は,中国革命を推進していく過程の31年,第1回全国ソビエト代表大会において,軍閥,官僚地主の支配する中華民国の少数民族の置かれた差別の実態を告発し,国民党政府の五族共和の欺瞞性を批判し,革命の戦線に少数民族の勢力を組み入れるとともに,少数民族の分離独立すら認め,すべての大漢族主義的傾向に反対を表明した。これはソビエト・ロシアの民族政策を受け入れたものであった。

 大漢族主義反対のスローガン抗日戦争時期はもとより,多民族国家として出発した人民共和国においてもたえず喚起されている。たとえば53年,〈大漢族主義を批判する〉という党内指示を毛沢東は発して,国内の民族問題解決にあたっての大漢族主義を厳しく批判した。人類史において少数民族の問題は,古くして新しい問題としてたえず立ちあらわれているが,人民共和国が大漢族主義を排して少数民族の問題をいかに解決するかは,今後の現実課題であり,そのなりゆきが注目される。中国の少数民族政策については,さらに〈中華人民共和国〉の項をも参照されたい。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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