大町(市)(読み)おおまち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大町(市)」の意味・わかりやすい解説

大町(市)
おおまち

長野県北西部、北アルプス山麓(さんろく)にある山岳都市。1954年(昭和29)大町を中心に平、常盤(ときわ)、社(やしろ)の3村が合併して市制施行。2006年(平成18)北安曇(きたあずみ)郡美麻村(みあさむら)、八坂村(やさかむら)を編入。市域の大半は高峻(こうしゅん)な山岳地で、北アルプスの雄峰槍(やり)ヶ岳の山頂にまで及ぶ。市街は山麓にあり高瀬川、籠(かご)川、鹿島(かしま)川の扇状地に展開する。JR大糸線のほか、近世の塩の道であった千国(ちくに)街道(糸魚川(いといがわ)街道)を継ぐ国道147号、148号が通過し、長野市方面にもバス連絡がある。東端の犀川沿いを国道19号が走る。1971年には黒部(くろべ)ダム、立山(たてやま)を経て富山市へ抜ける立山黒部アルペンルートが完成した。北アルプス北部の登山基地をなし、登山シーズンには駅前はアルピニストたちでにぎわう。市街の形成は鎌倉時代豪族仁科氏(にしなうじ)の居城となって集落が形成され、館跡は館之内(たてのうち)、北原町、木崎湖畔にある。現在の町の骨格は近世の市場(いちば)から始まり、現在も町名に三日町、九日町などの市日の名が残されている。昭和に入り、水力電気の安価、豊かさのためアルミ製造工場が進出し(1934)、ついで紡績工場もでき工業の町になったが、現在これらの工場は停滞気味で、かわって山岳観光の基地になり、1951年開館の市立大町山岳博物館や、仁科三湖、高瀬渓谷、大町、葛(くず)、湯俣(ゆまた)温泉など観光資源に恵まれている。このほか、本殿・中門の国宝を有する仁科神明宮や、若一王子(にゃくいちおうじ)神社、盛蓮寺観音堂(じょうれんじかんのんどう)(国指定重要文化財)もある。また高瀬川上流には大規模な水力発電所(最高出力128万キロワット)があり、高瀬ダム(1978年完成)で築造された湖水は、まさにアルプス山中の秘境である。面積565.15平方キロメートル、人口2万6029(2020)。

[小林寛義]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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