改訂新版 世界大百科事典 「大腸菌群数」の意味・わかりやすい解説
大腸菌群数 (だいちょうきんぐんすう)
大腸菌Escherichia coliとE.freundii,Aerobacter aerogenesの細菌を含めて大腸菌群と総称する。大腸菌群は通常,人や哺乳類の腸管に生息しており,それ自身は病原性を有さないが,これが水中に存在することは,多くの場合その水が人畜の屎尿(しによう)で汚染されていることを意味する。したがって腸管性疾患を引き起こす赤痢菌や腸チフス菌など水系伝染病菌の存在を間接的に推定する指標微生物となっており,また水中の検出が容易で確実であるので,屎尿による汚染の有無を直接知るもっとも重要な指標でもある。試験水中の大腸菌群数を定量的に表す方法として,確率的に求める最確数(MPN。most probable numberの略)がある。日本の水道原水基準では,比較的汚染されていない河川から水道原水を得る際に,大腸菌群数10MPN/ml以下と定められており,飲料水基準では検出されないこととなっている。下水処理場や屎尿処理場からの放流水基準は3000MPN/ml以下である。
執筆者:松井 三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報