腸チフス菌(読み)ちょうちふすきん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「腸チフス菌」の意味・わかりやすい解説

腸チフス菌
ちょうちふすきん
[学] Salmonella choleraesuis subsp. choleraesuis serovar. typhi

グラム陰性の通性嫌気性桿菌(かんきん)で、腸内細菌科サルモネラ属に属する細菌。通称はSalmonella typhi。0.5~0.8×1.0~3.5マイクロメートル(1マイクロメートルは100万分の1メートル)。ヒトに腸チフス症をおこす病原細菌で、単にチフス菌ともよぶ。代表的な腸チフス症は経口的に感染し、小腸回盲(かいもう)部に到達し、腸管粘膜下リンパや腸管リンパ節に入り増殖、約1週間後(潜伏期)に組織を壊し、菌は血中に入り菌血症をおこす。悪寒高熱などの症状となる。しかし、高熱はあるが脈拍はあまり変化はなく、白血球の減少がみられると、膵腫(すいしゅ)、バラ疹がみられる症状が伴う。このころ、菌は胆汁を通して、腸内に排出、腸出血、腸壁穿孔(せんこう)などへ進行、重症の場合は死への転帰をとる。

 通常、感染後3週にして強力な抗体ができ、熱も下がり回復する。回復後も胆嚢(たんのう)炎や胃孟(じんう)炎の後遺症を残す場合があり治療を必要とする。

 菌は3~6か月程度体のなかに保有され排出されることから、保菌者として感染源となるため注意が必要である。ときには腸出血を伴って重症となる。腸チフス菌赤痢菌などとの類似点は多いが、とくに細胞外側鞭毛(べんもう)(周毛)をもつことで区別される。培養の際、多くの株は硫化水素を生産する。このほか、生物学的性状としては、ブドウ糖などの炭水化物を分解して酸を産生する。ガスをつくるものもある。また、リジン、アルギニン、オルニチンの脱炭酸酵素をもち、尿素を分解しないなどの特徴があげられる。

[曽根田正己]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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