日本大百科全書(ニッポニカ) 「大量消費時代」の意味・わかりやすい解説
大量消費時代
たいりょうしょうひじだい
もとは、W・W・ロストウが規定した経済成長の五段階のうちの最後の段階をさすことば。彼は経済成長の段階を、(1)伝統的社会、(2)飛躍のための過渡期、(3)飛躍(テイク・オフ=離陸)、(4)成熟期、(5)高度の大衆消費時代、の五つに区分した。そして、アメリカの1920年代(自動車の量産と普及、道路の改善、住宅の郊外移転、耐久消費資材の普及)と、第二次世界大戦後(オートメーション、石油化学、原子力などの技術革新)の二つの経済状況を、大衆の大量消費に支えられた資本主義として、これを高度の大衆消費時代とよんだ。いいかえれば、それは科学技術の発達により、経済の主導部門が耐久消費材の大量生産、大量販売と、拡大されたサービスに移った時代である。J・K・ガルブレイスのいう「豊かな社会」もこの時代状況をさす。日本でも1960年代の高度経済成長期に、似たような国民の購買力に支えられた資本主義の発展がみられた。宮崎義一(よしかず)、長洲一二(ながすかずじ)(1919―1999)、伊東光晴(みつはる)(1927― )らがそれを「大量消費時代」とよんだことから、このことばが一般化した。だが、大量消費時代も1970年代のオイル・ショック以来、消費者の省エネルギー、省資源、環境保護への関心に基づく商品やサービスに対する価値観の変化などから、いまや再検討を迫られている。
[青木 茂]
『W・W・ロストウ著、木村健康他訳『経済成長の諸段階』(1961・ダイヤモンド社)』▽『J・K・ガルブレイス著、鈴木哲太郎訳『ゆたかな社会』(1960・岩波書店)』