天水(中国)(読み)てんすい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「天水(中国)」の意味・わかりやすい解説

天水(中国)
てんすい / ティエンショイ

中国、甘粛(かんしゅく)省南東部の地級市。2市轄区、清水(せいすい)県など4県と張家川(ちょうかせん)回族自治県を管轄する(2016年時点)。常住人口331万1700(2015)。この地域は流域としては渭河(いが)の上流になるが、東を六盤(りくばん)、隴山(ろうざん)両山脈によってくぎられて盆地(天水盆地)となり、関中(かんちゅう)を西からうかがう位置にあると同時に、陝西(せんせい)省から甘粛、四川(しせん)両省へ向かう際の入口にあたる。秦(しん)はここを基盤として東方へ進出し、天下を統一すると隴西(ろうせい)郡を置いた。漢以後も天水郡、秦州などが置かれ、西北地区の死命を制する地として重要視された。1913年天水県となり、中華人民共和国成立後、市街地の部分を市とした。

 渭河の灌漑(かんがい)を利用して農業が発達し、小麦や綿花の生産が盛ん。また陝西、甘粛、四川3省への交通が交わる地点にあたり、伝統的に商業が発達している。現在は隴海(ろうかい)線が通るほか、軍民共用の天水空港がある。手工芸では彫漆が著名であり、電子部品、機械、毛織物などの工業もおこっている。文化財としては、南北朝時代から開削された麦積山石窟(ばくせきざんせっくつ)が有名で、2014年には「シルク・ロード:長安‐天山(てんざん)回廊の交易路網」の構成資産として、世界遺産文化遺産に登録されている(世界文化遺産)。

[秋山元秀・編集部 2017年6月20日]

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