日本歴史地名大系 「天竜市」の解説 天竜市てんりゆうし 面積:一八一・六五平方キロ県の西部に位置し、東は磐田郡豊岡(とよおか)村・周智(しゆうち)郡森(もり)町、北は同郡春野(はるの)町、磐田郡龍山(たつやま)村・佐久間(さくま)町、愛知県南設楽(みなみしたら)郡鳳来(ほうらい)町、西は引佐(いなさ)郡引佐町、南は浜北市に接する。赤石山脈の最南端に位置する山間地で、赤石裂線(断層)に沿った天竜川がほぼ中央を南下し、市域で右岸に横山(よこやま)川・阿多古(あたご)川、左岸に気田(けた)川・二俣(ふたまた)川を合流する。これら河川の河岸段丘上に集落が点在する。当市は天竜奥三河国定公園の玄関口にあたる。面積の約八割を占める山林の八割は杉(天竜杉)の人工林である。交通はJR東海道本線掛川駅と新所原(しんじよはら)駅を結ぶ天竜浜名湖鉄道が南端部を通り、天竜二俣(てんりゆうふたまた)・二俣本町(ふたまたほんまち)・西鹿島(にしかじま)の三駅がある。西鹿島駅からは分岐して新浜松駅と結ばれている。天竜浜名湖鉄道にほぼ沿って国道一五二号・同三六二号が二俣を通り、それぞれ天竜川沿いに龍山村に、二俣川沿いに春野町に抜ける。ほかに天竜―東栄(とうえい)線・渡(わた)ヶ島(しま)―横山線・鮎釣(あゆつり)―東雲名(ひがしうんな)―春野線などの県道によって周辺諸町村と結ばれている。〔原始・古代〕市域には七〇余の遺跡があるが、旧石器の存在はまだ確認されていない。縄文時代の遺跡は河岸段丘上に多く、古くから知られてきたのは上野(かみの)遺跡で、後期・晩期の遺物が出土している。ヒラシロ遺跡では遠江の山間部初の竪穴住居跡が発見された。上野遺跡では前期弥生土器も出土しており、稲作文化伝来が早かったことを示している。しかし以降の弥生時代遺跡はみつかっていない。古墳時代の遺跡は山東(やまひがし)地区に中期の光明山(こうみようさん)古墳がある。この時期の前方後円墳としては遠江地方第二位という規模と、天竜川平野の扇の要ともいうべき占地が、被葬者の地位を暗示して注目される。平安時代中期からは河岸段丘上に灰釉陶器を出土する遺跡が増える。畑作による山間部の開発が始まったことを示しているようである。「和名抄」所載の磐田郡山香(やまか)郷・麁玉(あらたま)郡碧田(あおた)郷域などに含まれたとみられる。阿蔵(あくら)や船明(ふなぎら)には小字から条里制地割の存在が推定され、山東の上市場(かみいちば)にも存在が推測されている。 出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報 Sponserd by