好酸球性筋膜炎(読み)こうさんきゅうせいきんまくえん(その他表記)Eosinophilic Fasciitis

家庭医学館 「好酸球性筋膜炎」の解説

こうさんきゅうせいきんまくえん【好酸球性筋膜炎 Eosinophilic Fasciitis】

[どんな病気か]
 強皮症(きょうひしょう)(「強皮症(全身性硬化症)」)に似た皮膚症状を示す急性の病気です。血液中の好酸球(こうさんきゅう)(免疫にかかわる白血球(はっけっきゅう)の一種)とγ(ガンマグロブリン血清(けっせい)たんぱく)の増加をともなう、筋膜炎(きんまくえん)がみられます。
 筋膜炎は、左右の手、前腕(ぜんわん)、足の痛みと腫(は)れとして発病し、強皮症のように皮膚と皮下組織がいっしょにかたくなって、オレンジの皮のようになります。このため、手足の運動が制限されて、屈曲したままになってしまうこともあります。
 中年男性に発病することが多く、激しい運動後に発病することもあります。
 症状としては、微熱、全身のだるさ(倦怠感(けんたいかん))、四肢しし)の腫れ、皮下組織の硬化がみられます。
 原因は不明です。しかし、似た病気の好酸球(こうさんきゅう)‐筋肉痛症候群(きんにくつうしょうこうぐん)では、不純物が入ったL‐トリプトファン製剤、古いオリーブ油で生じることがあります。
[検査と診断]
 好酸球の増加、高ガンマグロブリン血症(けっしょう)、血沈(けっちん)の亢進(こうしん)がみられますが、筋肉の障害を示すクレアチンキナーゼ値(CK)の上昇は、ふつうみられません。自己抗体(じここうたい)である抗核抗体(こうかくこうたい)やリウマトイド因子も、一般にみられません。
 以上の検査結果と、圧痛をともなう強皮症のような手足の皮膚の硬化の有無、筋膜の組織を少しとり顕微鏡で観察する生検(せいけん)などによって診断します。
 強皮症とちがって、手指の硬化はなく、レイノー現象(全身の皮膚が蒼白(そうはく)から青くなり、やがて赤くなる現象)や内臓の病変もともないません。
[治療]
 ステロイド副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)薬を1日20~60mg内服します。
 ステロイド薬の内服とともに、からだの運動機能を保つため理学療法を行ないますが、激しい運動はひかえます。
 日常生活の注意としては、安静と運動をバランスよく行ない、ストレス、過労を避けるようにします。
 予防法は、とくにありません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「好酸球性筋膜炎」の解説

好酸球性筋膜炎
(膠原病と原因不明の全身疾患)

 前腕、下肢がびまん性に腫脹(しゅちょう)し、皮膚が硬くなる病気で、末梢(まっしょう)血中に好酸球が増加する場合があります。最近は、必ずしも血液や病変組織で好酸球が増えてないことから、「びまん性筋膜炎」と呼ばれるほうが一般的です。激しい筋肉運動を契機に発症することがあります。

 強皮症(きょうひしょう)と異なり、手指の皮膚硬化がなく、レイノー現象や内臓病変を認めません。皮下組織が硬くなるため、皮膚表面がオレンジの皮のようにデコボコしたり、血管の走行に一致して皮膚が凹む特徴的な外観を示します。手首足首の関節の動きも高率に制限されます。

 確定診断には皮下組織や筋膜を含めた皮膚生検が必要ですが、最近はMRI検査の有用性が示されています。治療には副腎皮質ステロイド薬(プレドニン)が効果を示しますが、タイミングが遅れると皮膚や関節の病変が後遺症として残ってしまいます。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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