姉小路氏(読み)あねがこうじうじ

改訂新版 世界大百科事典 「姉小路氏」の意味・わかりやすい解説

姉小路氏 (あねがこうじうじ)

飛驒国司家。世にいう三国司の一つ。藤原師尹の子済時が姉小路氏を称し,その裔が,鎌倉後期に飛驒に所職を有していたらしいが,家綱のとき,建武年中(1334-38)に南朝のいう御料の一国である飛驒の国司に任ぜられたといい,南朝方として活躍し,1378年(天授4・永和4)従三位参議に叙任された。家綱のあとの師言は,後亀山法皇還御の翌1417年(応永24),従三位参議に叙任され,ついで持言,勝言と継いだ。応仁・文明前後,勝言は吉城郡小島郷神通川以西の地頭職を有して小島城に拠り,之綱は小島向(小鷹利)を,昌家は古河郷を領し,小島,小鷹利,古河の3家が並立し互いに抗争した。のち,北飛の江馬氏に滅ぼされた古河家の名跡を,南飛の三木良頼が継いで姉小路嗣頼と改め,その子自綱が,内ヶ島氏の所領荘白川を除く飛驒を支配下に収めたが,1585年(天正13)豊臣秀吉の命を受けて飛驒を攻略した金森長近によって討滅された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「姉小路氏」の意味・わかりやすい解説

姉小路氏
あねがこうじうじ

(1)藤原氏北家(ほっけ)閑院流の公家(くげ)。13世紀初め三条実房(さんじょうさねふさ)の第3子公宣(きんのぶ)が京都・姉小路に住し家名となった。数代にして中絶。江戸初期、阿野実顕の子公景(きんかげ)が家名相続再興した。幕末の公知(きんとも)は攘夷派(じょういは)の公家として奔走、暗殺されたことで有名。明治維新後、その子公義は伯爵を授けられた。

(2)藤原氏北家小一条流、師尹(もろただ)の子孫の家綱(いえつな)が、南北朝時代に飛騨(ひだ)国司に任ぜられた一流。飛騨国司家ともいう。北畠(きたばたけ)(伊勢(いせ))、一条(土佐)氏と並んで三国司家といわれる。代々公卿(くぎょう)にも列し京都と往来した。戦国時代同国小島城により活躍したが、自綱(よりつな)は織田信長、豊臣秀吉(とよとみひでよし)に抗し、1585年(天正13)秀吉の将金森長近(かなもりながちか)に攻められ滅亡した。

[飯倉晴武]


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百科事典マイペディア 「姉小路氏」の意味・わかりやすい解説

姉小路氏【あねがこうじうじ】

(1)藤原氏北家小一条流。建武新政のとき家綱が飛騨国司になってより,代々小島城によって国司に任ぜられたが,1585年豊臣秀吉の将金森長近(ながちか)に滅ぼされた。(2)藤原氏北家閑院(かんいん)流。三条実行の孫実房の子公宣(きんのぶ)を祖とし,京都姉小路に邸があったので姉小路家と称した。6代実広以後数代中絶していたが1613年再興,明治に至り伯爵となる。
→関連項目飛騨国

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「姉小路氏」の意味・わかりやすい解説

姉小路氏
あねがこうじうじ

(1) 三条実房の子公宣を祖とし,数代で断絶したが,阿野実顕の3男公景が再興した。明治になり伯爵。 (2) 藤原師尹 (もろただ) の子孫で,飛騨国司家。建武中興の際,家綱が飛騨国司に任じられ,以後子孫が継承したが,天正 13 (1585) 年金森長近に滅ぼされた。

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世界大百科事典(旧版)内の姉小路氏の言及

【三国司家】より

…南北朝期から戦国末年にかけて,それぞれの国の国司として,領国経営を行った三家の総称。1548年(天文17)の述作という《運歩色葉集(うんぽいろはしゆう)》や《貞丈雑記(ていじようざつき)》などでは,飛驒国司姉小路氏,伊勢国司北畠氏,阿波国司一宮氏を三国司と称し,また合戦記ながら史料的価値も比較的高いとされる《足利季世記(あしかがきせいき)》では,姉小路氏,北畠氏に加えて土佐一条氏を挙げている。また江戸初期に成立した《甲陽軍鑑(こうようぐんかん)》などでは,伊勢,伊予,奥州を称するなど,諸書によって異同がある。…

【飛驒国】より

…荘園についても河上荘,白河荘の2荘の存在が確認されるのみで,国衙領の長期にわたる残存が指摘される。 岩松氏の守護在任期間は未詳だが,1359年(正平14∥延文4)以降は代々佐々木京極氏が守護となり,一方,建武政権下復活された国司にははじめ伊達行朝が,次いで姉小路氏が就任した。姉小路氏はやがて伊勢北畠氏,土佐一条氏とともに世に三国司と称され大名化するが,1411年(応永18)姉小路尹綱が広瀬常登とともに南朝の再起を図って挙兵,討死した。…

【古川[町]】より

…宮川沿いに国道41号線と高山本線が通じる。中心集落の古川は中世後期に飛驒国司家の姉小路(あねがこうじ)氏の拠点となり,近世には高山と富山を結ぶ越中西街道の中継地として栄えた。農林業を主とし,耕地に乏しい飛驒地方の中心的な米作地帯である。…

【三木氏】より

…出自についても京極氏支流多賀氏一族説など諸説ある。直頼のとき,永正末年益田郡の大半を攻略して萩原上村に桜洞城を築城,大永年間(1521‐28)には高山盆地に進出,本願寺門徒や高原の江馬氏,古川の姉小路氏などとの協調の上に飛驒での権力基盤を確立した。良頼,自綱(よりつな)の代には上杉氏,武田氏など周辺諸勢力と複雑に離合しつつ,1560年(永禄3)姉小路氏の名跡を継いで国司を号し,織田信長の美濃攻略以後は信長に好誼を通じた。…

※「姉小路氏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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