家庭医学館 「子どもの野球肘」の解説
こどものやきゅうひじ【子どもの野球肘 Baseball Elbow】
野球で投球をするときは、筋肉がついている肘の関節部分に、強い牽引力(けんいんりょく)がはたらきます。ボールを投げすぎると、筋肉が付着している部分に炎症がおこったり、関節軟骨に障害がおこり、肘に痛みが現われます。つまり、野球肘は、1回のけがではなくて、過度の練習の結果おこる障害です。
伸び盛りの子どものからだは、骨格と、これを支える組織が未発達で、過度の練習には弱く、同じ動作をくり返すスポーツ活動は、障害をおこしやすいものです。
野球肘は、身長の伸びが年間7cm以上の子どもに多くみられ、伸びが4cm以下の子どもには少ないことがわかっています。また、投球数の多い投手では、その38%が野球肘になりますが、内野手では13%、外野手は8%とあまり多くありません。
[症状]
肘を動かしたり、内側や外側を押すと、痛みがあります。肘が腫(は)れたり、完全に伸ばしたりできなくなります。
X線検査をすると、肘の関節軟骨(上腕骨小頭や内側上顆(じょうか)など)が破壊されかかっていたり、はがれた骨片が、関節の中に入り込んでいたり(関節鼠(ねずみ)(「関節遊離体(関節鼠)」))しているのがわかります。
[治療]
初めは、肘の安静が基本で、痛みのある間は投球をやめさせます。早いうちなら、大部分は適切な治療で治ります。
炎症が強いときは、消炎鎮痛薬を含む軟膏(なんこう)や湿布が用いられます。
関節鼠になると、手術が必要になります。
野球肘をおこさないためには、投球数を1日1試合50球以内、1週間に300球以下におさえるように指導します。
また、いったん野球肘がおこったときは、将来野球を続けるためにはいま治療をしておく必要があることを、本人や家族、指導者にもよく理解してもらわねばなりません。