野球肘(読み)ヤキュウヒジ(その他表記)baseball elbow

デジタル大辞泉 「野球肘」の意味・読み・例文・類語

やきゅう‐ひじ〔ヤキウひぢ〕【野球肘】

野球投球動作を繰り返すことで肘に痛みが生じる障害総称疲労骨折軟骨剝離靭帯損傷炎症などで、障害が出る部位も肘の内側(小指側)・外側(親指側)・後方肘頭)などさまざまである。→少年野球肘

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改訂新版 世界大百科事典 「野球肘」の意味・わかりやすい解説

野球肘 (やきゅうひじ)
baseball elbow

野球の投球によるひじの痛みを野球ひじと呼んでいるが,とくに熱心に練習に励んだ人にひじの障害がみられることはよく知られており,一種の使過ぎ症候群である。一般には野球の投球による各種のひじの障害を総称しているが,そのなかの一つ離断性骨軟骨炎という関節面の一部が遊離した状態になったものをchipped elbowとかbaseball elbowと呼び,野球ひじを限定した疾患のみに用いる人もある。

 野球の投球という動作は,立ち上がり期から加速期を経てフォロースルー期となる,かなり複雑で無理な運動であるが,とくに加速期ではひじの内側に引張り力が働き,内側を傷めやすい。逆に外側には上腕骨と橈骨頭とが圧迫される力が働くので,上腕骨小頭の関節軟骨に傷を受けやすい。もう一つは投球動作の最後にひじを過度に伸ばすので,ひじの後側に障害がくるというぐあいで,主としてストレスがどのように加わるかでひじの関節の損傷が変わるわけである。

 障害が重度となるのは旺盛な成長期における野球ひじである。痛みを訴える少年のひじの関節面は各種の程度に荒廃し,骨には骨化の異常が生じている。軽い時期に野球を中止させると元に戻りうるが,無理して続けると,先に述べた離断性骨軟骨炎といった関節面の一部が脱落するような状態をはじめ,強いひじの障害を起こしてしまう。こうした少年野球によるものをとくにlittle leager's elbowと呼んで,強い警告を発している人もいる。少年野球では投球数の制限,球種の制限(カーブを投げてはいけない)などの厳重な規制で,成長期の脆弱(ぜいじやく)なひじを守ってやる必要がある。野球のセンスと身体の生まれつきの頑丈さの両者をもつ人はまれで,現実には多くの少年が無知な監督や親のためにひじをこわしている。本格的な投球練習は成長期が終わる高校に入ってから始めるべきだとの意見が強い。使過ぎ症候群だから安静にしていれば治まるが,再発はきわめて多い。
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家庭医学館 「野球肘」の解説

やきゅうひじとうしゅひじりとるりーぐひじ【野球肘(投手肘/リトルリーグ肘) Baseball Elbow】

[どんな病気か]
 野球の投球時には、肘の内側に強い外反力(がいはんりょく)がはたらきます。そのため、手関節や指関節の屈筋回内筋群(くっきんかいないきんぐん)、内側側副靱帯(ないそくそくふくじんたい)に負担がかかり、肘の内側、外側、後側に痛みが生じるもので、使いすぎ症候群(「使いすぎ症候群」)の1つです。
●原因となる野球以外のスポーツ
 野球肘といわれる損傷の60%弱は、野球でおこりますが、バレーボール、テニス、ソフトボールバドミントンボート、槍(やり)投げでもおこることがあります。
[治療]
 少なくとも2週間は原因となったスポーツを中止し、痛みをとるために抗炎症薬や鎮痛薬を服用します。
 その後、約1か月間、肘周辺の筋力アップをはかるリハビリテーションを行ないます。
 関節鼠(かんせつねずみ)(「関節遊離体(関節鼠)」)の状態になっていれば、骨片(こっぺん)を取り除く手術が必要です。この場合、約2か月間のリハビリテーションが必要になります。
 投球フォームが正しくないときは、フォームの是正が必要です。
[予防]
 少年野球では、変化球を投げることを禁止したり、投球数を制限します。そうしないと、変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう)に進行して痛みが強くなり、関節の動きが障害されることがあるとされています。
 練習前後のストレッチ、筋力トレーニング、練習直後のアイスマッサージやアイシング(冷却)が有効です。

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百科事典マイペディア 「野球肘」の意味・わかりやすい解説

野球肘【やきゅうひじ】

野球の投球動作によって起こる,肘の障害。とくに関節軟骨の完成していない小児期に起こりやすく,少年野球の在り方について論議が起こるきっかけとなった。変化球の投球は肘に重い負担となるため,成長期にはさけるべきである。最も起こりやすいものは,上腕骨内側上顆核(じょうかかく)の不整や分離で,そのほか上腕骨の橈骨(とうこつ)上小頭の骨の一部がはがれる離断性骨軟骨炎の起こることもある。肘に痛みを感じた段階で野球を中止し,安静や肘を直角にした状態の固定で自然に治癒するが,離断性骨軟骨炎や骨端線離開が起こっている場合は,手術が必要になることもある。
→関連項目ランナーズ・ニー

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