野球の投球によるひじの痛みを野球ひじと呼んでいるが,とくに熱心に練習に励んだ人にひじの障害がみられることはよく知られており,一種の使過ぎ症候群である。一般には野球の投球による各種のひじの障害を総称しているが,そのなかの一つ離断性骨軟骨炎という関節面の一部が遊離した状態になったものをchipped elbowとかbaseball elbowと呼び,野球ひじを限定した疾患のみに用いる人もある。
野球の投球という動作は,立ち上がり期から加速期を経てフォロースルー期となる,かなり複雑で無理な運動であるが,とくに加速期ではひじの内側に引張り力が働き,内側を傷めやすい。逆に外側には上腕骨と橈骨頭とが圧迫される力が働くので,上腕骨小頭の関節軟骨に傷を受けやすい。もう一つは投球動作の最後にひじを過度に伸ばすので,ひじの後側に障害がくるというぐあいで,主としてストレスがどのように加わるかでひじの関節の損傷が変わるわけである。
障害が重度となるのは旺盛な成長期における野球ひじである。痛みを訴える少年のひじの関節面は各種の程度に荒廃し,骨には骨化の異常が生じている。軽い時期に野球を中止させると元に戻りうるが,無理して続けると,先に述べた離断性骨軟骨炎といった関節面の一部が脱落するような状態をはじめ,強いひじの障害を起こしてしまう。こうした少年野球によるものをとくにlittle leager's elbowと呼んで,強い警告を発している人もいる。少年野球では投球数の制限,球種の制限(カーブを投げてはいけない)などの厳重な規制で,成長期の脆弱(ぜいじやく)なひじを守ってやる必要がある。野球のセンスと身体の生まれつきの頑丈さの両者をもつ人はまれで,現実には多くの少年が無知な監督や親のためにひじをこわしている。本格的な投球練習は成長期が終わる高校に入ってから始めるべきだとの意見が強い。使過ぎ症候群だから安静にしていれば治まるが,再発はきわめて多い。
執筆者:山本 真
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