完全寺(読み)かんぜんじ

日本歴史地名大系 「完全寺」の解説

完全寺
かんぜんじ

[現在地名]西郷町今津

向山むこうやまにある曹洞宗寺院。飯尾山と号し、本尊薬師如来。慶長元年(一五九六)開基と伝える。もとは飯尾いいの山中腹にあったが、宝暦期(一七五一―六四)に現在地に移転。隠岐騒動の慶応四年(一八六八)当寺などは、神官庄屋が正義党同志などと号して寺院を破却するなどと取りざたし、実際辻地蔵や庚申塚などを手当り次第打倒し、また往来手形や宗門請印をないがしろにするなど寺院を侮ることはなはだしく、寺務方が困難になっていると松江藩に訴えている(「難渋迷惑集」隠岐島誌)。こうした神官・庄屋の動きは、当時の隠岐の諸寺院が松江藩と結び付いていることへの反発であった。同年八月東北遊撃軍総督の久我建通の乗艦が入港、同家と曹洞宗が関係の深いことを踏まえた隠岐曹洞宗の本山護国ごこく寺は島後どうごに回状を出して総督の武運長久祈祷を実施するが、当日門に立てた看板に「御祈祷中不浄之党不可入事」としたのが正義党を刺激、総督の離島後祈祷の事前届出がないことを理由に住職謹慎となった。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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