江戸時代、庶民が他藩領などに旅行する際に携帯しなければならなかった身許(みもと)証明書。往来一札、一札、覚(おぼえ)などと標題を記す場合もあった。特殊な場合には現地支配者の代官が発行することもあったが、普通には旅行者の檀那寺(だんなでら)あるいは村の庄屋(しょうや)(名主(なぬし))が発行した。手形の内容は時と所によって異なっていたが、初めに旅行者の所属・住所・名前・続柄・宗旨・旦那寺などが記されたあとに旅行の目的が記されるのが普通であった。旅行者はこの手形を藩領境などの番所や関所で呈示し人改めを受けて通行が許可された。1か所とは限らないため手形の宛名(あてな)は「国々御関所 御番衆中」のごとく特定されていなかった。なお同種で異なるものに関所手形がある。
[渡辺信夫]
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