読本。近路行者(きんろぎようじや)(本名都賀庭鐘)作。1749年(寛延2)に大坂の柏原屋清右衛門,菊屋惣兵衛から出版された。5巻に9編の短編を収める。題簽(だいせん),内題ともに《古今奇談英草紙》とある。和漢混淆文を採用し,俗語体の文章の末期浮世草子の世界に,雅語を交えた新しい文体の小説を登場させ,今日,読本の元祖とみられている。奇談集で,作品の多くは中国白話小説からの翻案である。それらは,《古今小説》などの典拠をかなり忠実に翻案したものと,《警世通言》などにのる原話を自由に翻案して自己の作品にしたものとがある。さらに,日本の古典や文献から素材をとり,庭鐘が独自の構成をした作品もある。
執筆者:浅野 三平
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江戸時代の読本(よみほん)。近路行者(きんろぎょうじゃ)(都賀庭鐘(つがていしょう))作。五巻五冊。角書(つのがき)「古今奇談」。1749年(寛延2)大坂菊屋惣兵衛(そうべえ)等刊。『繁野話(しげしげやわ)』『莠句冊(ひつじぐさ)』と並んで三部作をなす。「後醍醐(ごだいご)帝三たび藤房(ふじふさ)の諫(いさめ)を折話(くじくこと)」を初めとして全九話からなり、いずれも『喩世明言(ゆせいめいげん)』『警世通言(けいせいつうげん)』『青瑣高議(せいさこうぎ)』などの中国の白話(はくわ)・文言(ぶんげん)小説の話を日本風に翻案し、読本の嚆矢(こうし)として読本史に重要な位置を占める。堅固な構成、和漢の知識の開陳、明確な寓意(ぐうい)、人情の委曲な描写、漢文訓読に近い和漢混交体などの作風は、当時ぬきんでたものであったので、上田秋成(あきなり)、山東京伝(さんとうきょうでん)、曲亭馬琴(ばきん)らに多大な影響を与えた。
[徳田 武]
『中村幸彦校注・訳『英草紙』(『日本古典文学全集48』所収・1973・小学館)』
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…作品は小柄(こづか),笄(こうがい),目貫(めぬき),縁頭(ふちがしら)と多岐にわたり,赤銅魚々子(ななこ)地に肉高の高彫色絵のほか,四分一地に彼の創意になる片切彫があり,図柄は虎,獅子,獅子牡丹,一輪牡丹などが多い。また画家の英一蝶(はなぶさいつちよう)と親交が深く,一蝶の下絵になる作も現存している。一門に宗与のほか,横谷英精,柳川直政,大森英昌,古川元珍らがおり,その分脈はおおいに栄え,町彫の祖として高く評価されている。…
※「英草紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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