歌集、物語文学、経巻など大部の本を書写するに際して、何人かの書き手が分担して写すこと。たとえば、古筆(こひつ)における『高野切(こうやぎれ)』(『古今集』仮名序を含めて21巻を3人で書写)や、『西本願寺本三十六人家集』『元暦(げんりゃく)校本万葉集』などがそれで、写経の『久能寺経(くのうじきょう)』(『法華経(ほけきょう)』28品(ほん)に開結経(かいけつきょう)を加えた30巻)、『平家納経(へいけのうきょう)』も寄合書の遺例である。さらに、絵巻の分野でも、『源氏物語絵巻』の詞書(ことばがき)は5人の能書の手になる。単に書写時間の短縮のためばかりでなく、写経ならばその仏果を大ぜいで分かち合い、また古筆では、手の異なった名筆をさまざまに取り合わせる趣向のもとに行われた。
[久保木彰一]