日本大百科全書(ニッポニカ) 「寄生魚」の意味・わかりやすい解説
寄生魚
きせいぎょ
parasitic fish
ほかの水生の動物または魚類を宿主として生活する魚類をいう。ヤツメウナギ類の多くは、サケ・マス類、タラ類など生息場所をともにする大形魚類の体表に吸着し、歯や舌で傷口をつくり、ランフェレディンlampheredinという特別な液で赤血球や筋肉を溶かして食べる。ヌタウナギ類は、運動性の少ない魚のえらや肛門(こうもん)などのくぼみから体壁を食い破って体内に寄生し、内臓や筋肉を貪食(どんしょく)する。南アメリカの淡水にすむナマズ類のカンディルVandellia cirrhosaは、大きな魚の鰓孔(さいこう)から入り込んで宿主の血液を吸い取り、ときとして人間にも寄生することがある。深海魚のコンゴウアナゴは、大形魚の体の一部に穴をあけてすみつく。多くの深海性のチョウチンアンコウ類の雄は雌の体表に吸着する。繁殖期にのみ雌に付着するものは一時付着型で、チョウチンアンコウ科、ラクダアンコウ科などにみられる。寄生してもしなくてもよいものは任意寄生型で、ヒレナガチョウチンアンコウ科、バーテルセンアンコウにみられる。真性寄生型はミツクリエナガチョウチンアンコウ科、オニアンコウ科などにみられる。この型では寄生した雄は雌との間に組織的な結合がなされ、雌の血液から栄養をとって老廃物を送る。雄は目、ひれなど多くの器官が退化消失し、小さいいぼ状になり、精巣だけが発達して、宿主の雌との間で産卵する。寄生できなかった雄は死ぬ。カクレウオ類は尾部からナマコの体内に入り込み、稚魚は宿主の生殖腺(せん)や呼吸樹(呼吸器官)を食べ、成魚は外敵からの攻撃を避ける。
[落合 明・尼岡邦夫 2015年3月19日]