日本大百科全書(ニッポニカ) 「富士正晴」の意味・わかりやすい解説
富士正晴
ふじまさはる
(1913―1987)
詩人、小説家。徳島県出身。第三高等学校中退。在学中より象徴主義の詩人竹内勝太郎に師事。1932年(昭和7)その指導の下に野間宏(のまひろし)、桑原静雄と同人雑誌『三人』を創刊し、詩や評論、小説を書く。第二次世界大戦中は中国大陸に出征し、したたかな民衆の生命力を発見する。戦後は同人誌『VIKING(ヴアイキング)』を主宰。小説の代表作に『贋(にせ)・久坂葉子(くさかようこ)伝』(1956)、『帝国軍隊に於(お)ける学習・序』(1964)、毎日出版文化賞を受けた『桂(かつら)春団治』(1967)、詩集に『富士正晴詩集 1932~1978』(1979)など。自由闊達(かったつ)にして超俗的なその生活ぶりは、流行を追うのに忙しい文壇に対し一服の清涼剤でもあった。画業も余技以上のものがある。
[紅野謙介]
『『贋・久坂葉子伝』(1981・六興出版)』▽『『富士正晴詩集 1932~1978』(1979・泰流社)』