日本大百科全書(ニッポニカ) 「小児難治性肝疾患」の意味・わかりやすい解説
小児難治性肝疾患
しょうになんちせいかんしっかん
小児期における難治性肝疾患。厚生労働省の特定疾患(いわゆる難病)に指定されている劇症肝炎のほか、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌(がん)(ヘパトーム)も難治性の肝疾患である。
以下、小児の面から説明する。
(1)劇症肝炎 急激におこる肝臓の広範囲にみられる壊死(えし)により、急速に肝臓の機能不全がおこり、肝臓の萎縮(いしゅく)(形が小さくなる)、進行性の黄疸(おうだん)、なんらかの精神神経症状が現れてくる。肝性昏睡(こんすい)は、発病前には健康であった小児にはとくに重視される症状である。病因としてはウイルス性肝炎が大部分で、そのほか薬剤や肝臓毒などがあげられている。治療は一般療法に加えてステロイド療法や交換輸血などを行う。
(2)慢性肝炎 慢性に肝障害が認められ、肝臓の病理組織に特徴のある所見があることから診断される。ただ単に肝障害が持続しているだけでは、慢性肝炎以外の疾患が含まれることが多いので、出血傾向などがない限り、小児でも肝生検によって診断を決めるのが原則である。
(3)肝硬変 小児期の肝硬変の原因は数多くあるが、その大部分は比較的まれで、おもな原因は先天性胆道閉鎖症とウィルソン病であり、ウイルス肝炎によるものは成人より少ない。確定診断は、特異的な臨床症状と、腹腔(ふくくう)鏡による内視鏡検査や肝生検によって行われる。
(4)ヘパトーム 肝細胞癌であるが、小児期ではまれで、先天性胆道閉鎖症、新生児肝炎、チロジン症(チロジンの代謝障害)などに伴っておこった肝硬変を母体として発生する。
[山口規容子]