食の医学館 「ウイルス肝炎」の解説
ういるすかんえん【ウイルス肝炎】
《どんな病気か?》
〈A型、B型、C型などの肝炎ウイルスの感染で起こる〉
肝炎(かんえん)とは、肝臓に炎症の起こった状態で、1~2か月以内で治るものを急性肝炎、6か月以上続くものを慢性肝炎といいます。最大の原因はウイルス感染で、日本でみられるおもな肝炎ウイルスにはA型、B型、C型などがあります。
肝炎ウイルスの感染経路としては、A型はウイルスに汚染された飲食物を口にすることで感染する経口感染になります。B型は性行為や注射の使い回しなどからの感染です。C型は輸血・血液製剤・注射などからの感染ですが、現在ではあまりみられなくなっています。
急性肝炎の症状は、かぜとよく似ており、発熱や嘔吐(おうと)などが現れますが、それに食欲不振や倦怠感(けんたいかん)が加わることが特徴で、数日後に黄疸(おうだん)がでることもあります。
肝臓は「沈黙の臓器」といわれるように、慢性肝炎では自覚症状のないことも多く、放置した結果、肝硬変(かんこうへん)(「肝硬変」参照)に移行する場合も多いので、定期的に検査を受けることが必要です。
《関連する食品》
〈いたんだ肝臓の修復に欠かせないたんぱく質〉
○栄養成分としての働きから
急性肝炎の発病初期には発熱や嘔吐などの症状があるため、流動食やおかゆにし、食欲がでてきたら、なるべく早くふつう食にもどし、たんぱく質、ビタミン、ミネラルを十分とるようにします。
エネルギーが不足すると肝機能の回復がおくれますが、とりすぎても脂肪が肝臓にたまって回復がおそくなります。
急性肝炎の発病初期(肝機能の値が高いとき)や慢性肝炎では、1日2000kcalを目安にします(急性肝炎の回復期は2300~2500kcalに)。
昔から「肝臓病にはシジミ」といわれていますが、シジミには良質のたんぱく質が多く含まれ、アミノ酸スコアが95点です。
たんぱく質は、いたんだ肝細胞を修復するのに欠かせない栄養素であり、シジミがよいというのは理にかなっているのです。もちろん、たまごや牛乳、魚、肉、納豆やとうふなどのダイズ製品もおすすめです。
肝臓は、ビタミンの貯蔵庫でもあります。肝臓が正常に働いていれば、ビタミンの摂取量が不足してもストック分で補うことができますが、肝機能が低下すると貯蔵量も減り、疲労感が強くなります。各種ビタミンを十分にとりましょう。
なかでも、ビタミンCには抗ウイルス作用があり、肝炎の回復に有効です。たんぱく質とビタミンCを両方含むエダマメなどは最適。また、ビタミンCはミカンなどの柑橘類(かんきつるい)に多く含まれています。
肝機能を強化する働きのあるタウリンや、肝臓の解毒機能をうながすクルクミン、グルタチオンも効果的です。
タウリンはシジミやアサリに、クルクミンはウコンの根からとれる香辛料ターメリックやウコン茶に、グルタチオンはレバー、タラ、アカガイ、ブロッコリーなどに含まれています。
アルコールは肝臓に大きな負担をかけるので、禁酒して肝臓を休めることも忘れずに。