難治性肝疾患(読み)なんちせいかんしっかん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

難治性肝疾患
なんちせいかんしっかん

原因が不明で、治療がきわめて困難な肝臓の疾患をいう。

[恩地森一]

難病指定されている難治性肝疾患

厚生労働省が特定疾患としていわゆる難病の指定を行っている肝疾患には劇症肝炎、症候性の原発性胆汁性肝硬変primary biliary cirrhosis(PBC)と肝内胆管障害がある。劇症肝炎はウイルス肝炎や薬物性肝障害の経過中8週間以内に重症化し、急激に高度の肝機能障害と意識障害が起こる病気である。急性肝炎の1~2%が劇症肝炎に移行するとされ、日本では年間450人前後が発病している。PBCは、中高年の女性に多い、自己免疫疾患と考えられている難病である。日本で3万人程度の患者数で、その3分の2は黄疸(おうだん)、胃・食道静脈瘤、瘙痒(そうよう)感や浮腫、腹水などの症状がない無症候性のPBCである。胆汁酸製剤などが使用されているが特効薬はなく、肝硬変に進むと肝不全で死亡する。肝移植(肝臓移植)が行われている。

 肝内胆管障害とは、肝内胆管の拡張、狭窄(きょうさく)、合流異常、硬化性胆管炎といった病像や疾患の総称である。胆管拡張や胆管狭窄は、肝内結石症や先天性胆管拡張症で高率に観察される。肝内結石症や先天性胆管拡張症の患者では腹痛や発熱の症状が主である。肝内結石症や先天性胆管拡張症の患者では、その疾患に対する治療を行うことになる。

 硬化性胆管炎は、原発性硬化性胆管炎primary sclerosing cholangitis(PSC)とPSC以外に分類されている。PSCの頻度は男性にやや多く、20歳代と50~60歳代の発生頻度が高くなっている。肝内胆管だけでなく肝外胆管にも異常が多い。約2割の患者に潰瘍性大腸炎を合併している。硬化性胆管炎では、黄疸、瘙痒感がおもな症状であるが、無症状で発見されることもある。硬化性胆管炎に関しては、病態に応じて内服治療、内視鏡的治療あるいは放射線治療、さらには外科手術といったさまざまな治療法が行われている。なかでも、PSCの原因治療法はなく、対症的な治療にとどまる。進行すると肝移植が適応となるが、再発率が高い。

[恩地森一]

その他の難治性肝疾患

特定疾患の指定の条件に原因が不明であることがあるため、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、肝硬変は、治療は困難な疾患であるが原因がわかっており難病に指定されていない。

 B、C型の慢性肝炎と肝硬変は患者数が多く、原因が同定されているが、インターフェロンを含む抗ウイルス薬によって治療効果が得られている。B、C型の慢性肝炎は、肝硬変に進展して死亡する場合があり、またこれら二者は肝細胞癌(がん)(肝癌)を高率に併発することから、難治性の肝疾患である。

[恩地森一]

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