小幡郷・小幡位田(読み)おばたごう・おばたいでん

日本歴史地名大系 「小幡郷・小幡位田」の解説

小幡郷・小幡位田
おばたごう・おばたいでん

和名抄」神崎郡小幡郷の地に成立した庄園・中世郷で、愛知えち川西岸の小幡とその西方竜田たつた位田いんでを遺称地とする。郷域は現五個荘町から北方能登川のとがわ町域にも及ぶと考えられる。遅くとも平安末までに摂関家領小幡位田が成立、九条兼実がその家領を娘宜秋門院(九条任子、後鳥羽天皇中宮)に譲渡処分するために作成した元久元年(一二〇四)四月二三日付の置文(九条家文書)に「女院庁分御領」の一つとして「近江国小幡位田」がみえる。摂関家領となった時期や経緯については明らかでない。天福年中(一二三三―三四)、宜秋門院はこの小幡位田の上分職権の一部を坂本日吉社の申日御供料として寄進したらしい(元応元年一〇月日吉社領注進記)。「民経記」寛喜三年(一二三一)一〇月九日条所収の伊勢勅使役賦課免除所領の一覧に小幡位田の名もみえている。そののち九条家からの一条家の分立にともない一条家領となったようで、建長二年(一二五〇)一一月日付の九条道家惣処分状(九条家文書)には前摂政一条実経分のうちに女院方として記され、日吉申日御供に寄進と注記されている。年未詳の一条摂政実経家所領目録案(同文書)にも日吉社知行との注記がある。以後一条家領小幡位田にかかわる史料は姿を消し、庄務の実際は日吉社が支配するようになっていったらしい。

承久三年(一二二一)、「小幡之住人字惣案主」が日吉社小五月会の馬上役勤仕を拒否したことに対して後鳥羽上皇は院宣を下し、この徴収に努めるとともに、抵抗するものがあればその身を拘禁し所領を没収するよう検非違使佐々木広綱に命じている(同年四月八日「後鳥羽上皇院宣」「延暦寺政所下文」華頂要略)前掲の注進記によれば、小幡位田には惣庄としての位田と、その内に別名として御戸開御供料所の「則光・近永・正住・安近」の四名があった。元応元年(一三一九)から翌二年にはこの惣庄・別名の当知行をめぐり神主成久と春鶴丸・権禰宜行世との間で相論があったが、結果は不明。

室町期には庄田しようでん(現小幡か)なか(現中か)のう(現簗瀬か)の下二郷を合せて小幡三郷と称した。永享四年(一四三二)には郷内閤村たね村をめぐる争いがあったらしく三月九日当知行の者の召進が守護六角氏に命じられ、一〇月二九日には下地を日吉社雑掌に渡すよう伝えられている(御前落居奉書)。閤村は現能登川町神郷じんごうあるいは五個荘町おくと推定され、種村は能登川町種とされる。康正二年(一四五六)の造内裏段銭は日吉社領「小幡位」にも賦課され、同所の段銭一貫文が納められた(造内裏段銭并国役引付)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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