日本大百科全書(ニッポニカ) 「少数支配の原則」の意味・わかりやすい解説
少数支配の原則
しょうすうしはいのげんそく
支配‐被支配の関係において支配者はつねに少数であるというもの。政治権力が、組織された少数の者によって掌握され、この少数者が社会を支配するのは、民主制であると君主制であるとを問わず、超体制的現象であることをG・モスカは指摘した。ルソーも、多数者が少数者を支配することは自然の秩序に反する、と述べている。これが単に包括的社会のみならず集団しかも民主主義的集団にも妥当することをR・ミヘルスは政党組織の実証的研究によって証明し、寡頭制の鉄則iron law of oligarchyを提示した。ここにおいて、寡頭制への傾向は、組織自体の要請、大衆の心理、指導者の心理という三つの側面から説明される。組織の円滑な運営と効率的な目的遂行のために管理機構の整備が要請され、この管理機構は少数で構成されるのでなければ効率的で安定した運営は望めない。大衆は政治的無関心、無能力が顕著であり、大衆の代表者として行動してきた人々に対する感謝の念と指導を求める欲求をもっている。指導者は、自己の人格的価値や能力に対して自信をもち、それを発揮したいという欲求と、大衆によって指導を求められているという使命感から支配的立場を追求する。
アメリカにおける支配集団として「官軍産複合体」を描き出したミルズや、「エリートの周流」説を唱えたパレートなどのエリート論も、民主主義的多数支配が擬制にすぎないことを指摘している。
[大谷博愛]