モスカ(読み)もすか(英語表記)Gaetano Mosca

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モスカ」の意味・わかりやすい解説

モスカ
もすか
Gaetano Mosca
(1858―1941)

イタリア政治学者。シチリア島生まれ。パレルモ大学卒業。トリノミラノローマの各大学で憲法学、政治学を教授したが、他面、1909年には下院議員に、1919年には上院議員になるなど、政治家としても活躍した。彼の政治理論はその折衷主義的性格や深い理論構成の欠如から批判されるところではあるが、イタリアにおける政治学の社会学的伝統の開花は、彼に負うものである。彼は、政治の中枢を政治的諸階級編成に求め、多様な制度や政治行動における「不動の、確実な事実」として、「どのような時代においても、また、どのような場所においても、政治的諸機能は特定の階級にゆだねられる」ということを明らかにした。特定の階級=支配階級の社会学的構成は、歴史的発展の水準に応じて、軍事的価値、財産、個人的功績などにより多様に決定されるとした。主著として『政治学の諸要素』Elementi di scienza politica(1896)、『近代民主主義における政党の社会学』La sociologia del partito politico nella democrazia moderna(1912)、『古代都市国家と近代代議制国家』Lo Stato-città antico e lo Stato rappresentativo moderno(1924)、『政治理論史』Storia delle dottrine politiche(1933)などがある。

[村上義和]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モスカ」の意味・わかりやすい解説

モスカ
Mosca, Gaetano

[生]1858.4.1. シチリア,パレルモ
[没]1941.11.8. ローマ
イタリアの政治学者,政治家。トリノ大学,ローマ大学教授,また上院・下院議員もつとめる。その主著『政治学要綱』 Elementi di scienza politica (1896) において「支配する階級」の恒久的存在を指摘するとともに,その形成や交代を論じて,エリート理論先駆者の一人となった。イタリア・ファシズムには晩年まで批判的であったといわれる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報