パレート(読み)ぱれーと(英語表記)Vilfredo Federico Damaso Pareto

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パレート」の意味・わかりやすい解説

パレート
ぱれーと
Vilfredo Federico Damaso Pareto
(1848―1923)

イタリアの経済学者、社会学者。パリに亡命したイタリアの貴族の子として生まれる。10歳のときイタリアに帰り、大学では数学工学を学んだ。卒業後技師や実業家となったこともあるが、のちに経済学の研究を始め、1893年に45歳でワルラスの後継者としてスイスのローザンヌ大学教授となり、15年間在職した。パレートの経済学はワルラスの一般均衡理論を受け継ぎ、消費理論では、基数的効用理論にかわって無差別曲線に基づく序数的効用理論を展開して、現代の消費者選択理論の基礎を築き、厚生経済学の面では、社会の経済的厚生の極大化についていわゆるパレート最適性の考え方を導入し、新厚生経済学への道を開いた。また所得分布については、統計調査に基づいてパレートの法則とよばれる所得分布の不平等度を示す経験的な経済法則を導出した。社会学にも強い関心を示し、ローザンヌ大学退職後はジュネーブで社会学の研究や執筆に従事した。彼の社会学は人間行動を合理的な行動としてとらえるだけでなく、不合理な行動の面をも重視したことから、イタリア・ファシズムの思想的源流になったという評価もある。主著は『経済学講義』全2巻(1896、1897)、『経済学提要』(1906)、『一般社会学提要』(1920)など。

志田 明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パレート」の意味・わかりやすい解説

パレート
Pareto, Vilfredo

[生]1848.7.15. フランス,パリ
[没]1923.8.19. スイス,ジュネーブ
イタリアの経済学者,社会学者。トリノ工科大学卒業後実業界に入ったが,マフェオ・パンタレオーニの影響によって経済学に関心をもち,その推薦で 1893年レオン・ワルラスの跡を継いで 1900年までローザンヌ大学教授を務めた。ワルラスを継承して一般均衡理論の大成に貢献した。また従来効用の可測性を前提に成立していた限界効用理論から効用可測性の問題を排除し,いわゆるパレート最適概念を導入して,新厚生経済学の基礎を築いた。晩年は社会学に関心を移し,エリート循環論や社会均衡論などで知られる独自の社会学体系を樹立した(→エリートの周流)。『経済学講義』Cours d'économie politique(2巻,1896~97),『経済学提要』Manuale d'economia politica(1906),『一般社会学概論』Trattato di sociologia generale(2巻,1916)など著書多数。

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