日本大百科全書(ニッポニカ) 「就学前教育」の意味・わかりやすい解説
就学前教育
しゅうがくぜんきょういく
子どもが小学校に入学するより前に通う幼稚園・保育所・認定こども園で行われる教育の総称。一般的には「幼児教育」ともよばれる。日本では「幼児」とはおおむね1歳から小学校に入学する前の満6歳になる子どもまでをさす。ただし、2018年度(平成30)に改定された保育所保育指針において、保育所が幼児教育を行う施設と定められたことにより、日本での就学前教育は1~5歳児を対象とするともいえる。その年齢は国によって違いがある。
幼児期の教育についてはそこへの投資がその後の子どもたちの成長にどのような影響を与えるかといった縦断調査が世界各国で行われている。なかでも2000年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者ヘックマンが、就学前の教育への投資の重要性を説いたことや、2001年には経済協力開発機構(OECD)による就学前の子どもに対する各国の教育の調査白書『Starting Strong』が発行され、保育そのものや、その質の向上の重要性が広く知られるようになったこともあり、世界的にも「就学前教育」という概念が一般的になってきた。日本でも2018年度に改定された幼稚園教育要領や保育所保育指針においては、とくに小学校との接続が重要視される傾向にあり、「就学前教育」としての幼稚園・保育所・認定こども園の役割は重要視されてきている。一方で日本の就学前教育にかける予算はOECD諸国のなかでも最低レベルであり、就学前教育の重要性について国民的なコンセンサス(合意)をいかに得るかが重要な課題である。
[猪熊弘子 2019年3月20日]