尾を泥中に曳く(読み)オヲデイチュウニヒク

デジタル大辞泉 「尾を泥中に曳く」の意味・読み・例文・類語

泥中でいちゅう

《楚王に仕官を求められた荘子が「亀は、殺されて占いの用に立てられて大切にされるよりは、泥の中に尾をひきずってでも生きているほうを望むだろう」と言って断わったという「荘子秋水故事から》仕官して自由を束縛されるよりも、貧しくとも郷里で気楽に暮らすほうが良いということのたとえ。尾を塗中とちゅうに曳く。曳尾えいび

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精選版 日本国語大辞典 「尾を泥中に曳く」の意味・読み・例文・類語

お【尾】 を=泥中(でいちゅう)に[=塗中(とちゅう)に]曳(ひ)

  1. ( 荘子が楚王に仕官を求められた時、「亀は、殺されて亀卜(きぼく)の用に立てられて尊ばれるよりは、泥の中に尾をひきずって歩いてでも、生きるほうを望むだろう」と断わったという「荘子‐秋水」に見える故事から ) 仕官して束縛されるより、貧しくても家で安らかに暮らすほうがよいということのたとえ。
    1. [初出の実例]「耳饒林底伝歌鳥、身類泥中曳尾亀」(出典本朝無題詩(1162‐64頃)三・雲林院花下言志〈大江佐国〉)
    2. [その他の文献]〔蜀志‐郤正伝〕

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故事成語を知る辞典 「尾を泥中に曳く」の解説

尾を泥中に曳く

どこかに勤めて束縛されるより、貧しくても自立して安らかに暮らすほうがよいことのたとえ。

[使用例] 荘子は亀と同じく尾を泥中に曳かんといったが、猪が多く食って泥中に眠るも気楽千万で[南方熊楠*十二支考 猪に関する民俗伝説|1923]

[由来] 「荘子―秋水」に出て来るエピソードから。あるとき、紀元前四~三世紀の中国の思想家、荘子のもとに、の国の王から使者がやってきて、彼を宰相として迎えようと申し出ました。すると、荘子は、こんなことを尋ねます。「楚の国には、死んで三〇〇〇年にもなる亀が、立派にまつられているそうですね。その亀は、死んでまつられているのと、生きて泥の中で尾を引きずっているのと、どちらを望んだでしょうか」。使者たちは当然、「生きている方でしょう」との答え。それを聞くやいなや、荘子は、「け、吾はまさに尾をちゅうに曳かんとす(お帰りください、私は泥の中に尾をひきずっていたいのです)」と答えて、その申し出を断った、ということです。

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