家庭医学館 「尿路憩室」の解説
にょうろけいしつ【尿路憩室 Urinary Diverticulum, Urethral Diverticulum】
腎臓(じんぞう)でつくられた尿は腎盂(じんう)、尿管(にょうかん)、膀胱(ぼうこう)、尿道(にょうどう)と続く尿路を通ってからだの外に出ます。この尿路の壁に、外にまで通じる完全な穴ではなく、不完全なほころびができ、その弱くなった壁の一部が、中を通る尿の圧力により、風船をふくらませたように外にむかって袋状に突出したものを尿路憩室といいます。できた場所により、腎杯憩室(じんぱいけいしつ)、尿管憩室(にょうかんけいしつ)、膀胱憩室(ぼうこうけいしつ)、尿道憩室(にょうどうけいしつ)と呼びます。
尿路内の圧力が高ければ憩室ができやすいので、尿路に通過障害があるとその上流部に憩室ができやすくなります。前立腺(ぜんりつせん)の肥大にともなって尿道の狭窄(きょうさく)がおこり、それによって膀胱憩室ができるというのがその例です。憩室内部は尿がたまりがちで、「流れる水は清し」の逆で、憩室内部には細菌感染、結石(けっせき)、腫瘍(しゅよう)がおこりやすくなります。
[検査と診断]
憩室の存在は、尿に造影剤が入るようにして尿路を撮影するX線写真(尿路造影)や、内視鏡の挿入による観察で診断されます。結石や腫瘍があるのではと検査してみたら、憩室が見つかったということもあります。
[治療]
憩室そのものが問題となることは少ないのですが、細菌の感染、結石、腫瘍などができやすいのが問題です。専門医はその危険性の程度を判断し、開腹して切除したり、内視鏡手術を行なったりします。