屋市(読み)あしやし

日本歴史地名大系 「屋市」の解説

屋市
あしやし

面積:一七・二一平方キロ(境界未定)

兵庫県の南東部、阪神間のほぼ中央に位置する。東から北にかけては西宮市、西は神戸市に接する。市域は南北に狭長な短冊形で、北は六甲ろつこう山地から南は大阪湾に至る。市の北半分は山地で、山中に発した芦屋川みや川が並行するように市中を南流する。芦屋川は延長八キロほどの小規模な川であるが高度差は大きく、山中ではV字谷を刻み、下流では典型的な天井川となっている。支流の高座こうざ川には高座の滝がある。市の南半は山麓の段丘層に続いて沖積層緩傾斜の平地を形成し、この平地部に耕地が開かれて集落が営まれ、山陽道が通じ、近代には市街地が形成された。JR東海道本線・阪神電鉄本線・阪急電鉄神戸線の三鉄道、国道二号・四三号が市域を東西に横断し、南北には六甲越の自動車道芦有道路が有馬ありま(現神戸市北区)へ通じている。市域は古代より兎原うはら郡に属しその東端に位置したが、兎原郡は明治二九年(一八九六)武庫むこ郡に統合された。昭和一五年(一九四〇)の市制施行にあたり、一般にもよく知られ、官公署や各鉄道の駅名にも用いられていた芦屋の地名を市名とした。芦屋は古く葦屋あしやとも書き、葦屋処女(兎原処女)をめぐる妻争い伝説を主題とした田辺福麻呂・高橋虫麻呂・大伴家持の歌が「万葉集」にみえる。

〔原始・古代〕

旧石器時代の遺物として打出小槌うちでこづち遺跡や朝日あさひおか町からナイフ形石器などが出土している。縄文時代の遺跡には前期前半の朝日ヶ丘遺跡、全期間継続する山芦屋やまあしや遺跡がある。弥生時代の遺跡として、第二次世界大戦後の早い時期に全域が発掘された会下山えげのやま遺跡が著名である。竪穴住居跡六棟・祭祀跡二基・土壙墓三基が確認された高地性集落遺跡で、外クド(屋外炉)跡・廃棄場なども検出されている。またくすのきどううえから流水文銅鐸が出土し、親王しんのう寺に保管されている。前・中期古墳には阿保親王塚あぼしんのうづか古墳・打出小槌古墳があり、金津山かなつやま古墳は中期の前方後円墳であることが判明した。後期の群集墳として八十塚やそづか古墳群・三条さんじよう古墳群などが知られ、山芦屋古墳や旭塚あさひづか古墳などは巨石石室墳の代表例である。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報